第一部
死と共にはじまるものは、生である
愛は死よりも、死の恐怖よりも強い
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地球温暖化が各地で叫ばれる最中、猛暑日が続くとある日??
ある高校に異変が起きた
1人の男子生徒を担架に乗せ、慌ただしく保健室に運び込まれたものの――
部活の仲間や教員たちが青ざめた顔で祈る中、手当ての甲斐なく熱中症で死亡した
黄色い太陽が焼き尽くしたような、そんな夏の日
まさか、口酸っぱく注意されていた熱中症で死ぬことになるなんて思いもしなかった
先生、職員会議もんだな・・・
いや、絶対それだけじゃ済まないだろうけどさ
悪いことしちゃったな
死んだっていうのに軽すぎるかもしれないけれど
今は本当にそんなことはどうでもいいんだ
目は見えず、瞼が上がらないのだと気がついたのは何時だっただろう
真っ暗な中で柔らかな何かに包まれている
すぐ傍から聞こえる鼓動が、自分の物ではない音がこれが現実なのだと知らせている
優しい音にまどろみながら、時折手足を動かす
あまりに小さな手足が動くことはほとんどなかったが、優しい音が嬉しそうに跳ね上がるのを聞いて微笑んだ
突如轟音が鳴り響き、驚いて瞼が開いた
その目が写し出したのは、何処かで見たことのあるもの
目の前の光景が明らかにおかしい
彼方には、見たことのある額当てにべスト、手裏剣やクナイを使った牽制攻撃、もはや目では追い切れない回避行動
此方には、これまた見たことのある黒マント姿の男たちで、赤い雲が刺繍されている
マントを靡かせながら次々に人外的な攻撃を繰り出している
これが走馬灯なのだろうかいや絶対違う
巷で噂の・・・トリップとかいう奴だろうか
ここは神様が現れるのがテンプレだろうに、何をしているのか
現実逃避がてらまだ見ぬ神への暴言を考えた
熱い何かが体に突き刺さり、再び闇の中に落ちていく
転生という言葉が脳裏をよぎり、不安と共に身を捩る
微かに聞こえた、けたたましい狐の泣き声が、何時までも耳にこびり付いた
傷口からとめどなく溢れる血を拭おうとした処で、俺の意識は途絶えた
◇
誰かの声が聞こえる
甲高く、それでいてか細い泣き声
声の主を探そうと目をあけようとして違和感に気づく
瞼がひどく重い
とてもじゃないが自力では開けない
怪我の影響だろうか、包帯でも巻かれているのだろうかと考えているうちに、突如腹部が熱をもった
じんわり、いや、そんな優しいもんじゃない
熱を認識した途端、激しい痛みが俺を襲い、その衝撃で微かに瞼が開いた
ターバンの上に額当てを付けた青年と、まるで汚らわしいとでも言わんばかりの目を向ける、白衣の中年たち
いつの間にか泣き声は止んでいたのだが、こいつらが泣いていたわけではなさそうだ
三日月が掘られた額当て
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