第五十四話 ドゥカーバンクの戦い・後編その1
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えながら、シュヴルーズに習ってテーブルの下に隠れていた。
「怖いのかしら、ミス・ヴァリエール」
「こ、こここ、怖くないわ!」
誰がどう見ても、やせ我慢だ。
シュヴルーズは、蹲った体勢のまま、怯えるエレオノールに接近し、おでことおでこが、くっ付くほどに近づいた。
「ごめんなさいね、ミス・ヴァリエール。私が誘ったばかりに怖い思いをさせてしまったようね」
「……ミス・シュヴルーズ」
エレオノールを、この旅に誘ったのはシュヴルーズだ。
シュヴルーズが、アトラス計画に参加する為の準備中だった時、寄宿舎に転がり込んで来たのを保護し助手として雇ったのが二人の出会いだった。
『女性でありながら高名な学者である、ミス・シュヴルーズのご指南を頂きたく参上いたしました!』
何処かの時代劇の様な口上のエレオノールに、シュヴルーズは笑って迎え入れた。
後で、エレオノールの素性を調べてシュヴルーズは引っくり返った。トリステイン王太子妃の姉で、トリステインでは『超』が付くほどの名家のラ・ヴァリエール公爵の長女だったからだ。
「富、名声、共に申し分ない名家の御長女がどうしてこんな所に……」
とシュヴルーズは聞いた。将来的にはトリステイン王国の外戚として権力は思いのままなのに……とは口から出掛かったがそこは大人、何とか飲み込んだ。
出航まで時間が無かった事で、結局エレオノールがラ・ヴァリエール家を出た事も説明せずに、二人はベルギカ号に飛び乗った。
……話を戻そう。
「ミス・ヴァリエール。この戦闘が終わったら貴女は帰りなさい。艦長には私から言っておきますから」
「だ、大丈夫です。本当に大丈夫ですから」
エレオノールは懇願した。
「貴女……家出してきたのね」
「……私は!」
シュヴルーズの言葉に、エレオノールは何か反論しようとしたが、ベルギカ号が傾斜を始め、反論の機会を逃してしまった。
「話は戦闘の後にしましょう」
「……はい」
ベルギカ号は更に傾斜し、テーブルの上に乗っていた木杯や木の皿が床へと落ちた。
食堂内の学者達は必死にテーブルなどにしがみ付いていた。
……
「照準良し!」
「撃て!」
艦首中央に設置されたロケットポッドが火を噴き、24発の8サントロケット弾が『王』に向けて放たれた。
火を噴いて進むロケット弾の金切り音が空に響く。
しかし、24発全てのロケット弾は、『王』の先住魔法『反射』の見えない膜の様なモノにまで到達すると、爆発せずに、方向を変え四方八方へ飛んでいった。
「失敗……だと!」
ド・ローテル周辺では、まさかの失敗に驚きの声を上げた。
「艦長!
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