第五十四話 ドゥカーバンクの戦い・後編その1
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、バウスプリット(船首に付いている棒みたいな奴)に乗り、下方の『王』の警戒をしているジャックに聞いた。
「どうも、嫌な『空気』がします」
「空気が? 嫌な感じという意味か?」
「攻撃が近いかと……」
曖昧な予想だった。だが、コマンド隊の入る前は猟師として森を駆け、旧式マスケット銃一丁でオーク鬼と渡り合った経歴を持つジャックをデヴィットは信頼していた。
「……そうか、アニエス!」
「はい!」
「ひとっ走りして、艦長の海獣の攻撃が近い事を知らせろ!」
「了解!」
アニエスが、ド・ローテルの下へ走ってすぐにベルギカ号は慌しくなった。そして……
『敵海獣の周辺に異変!』
物見からの報告で、ベルギカ号は大きく舵を切った。回避行動の為である。
それと同時に、『王』の周辺の気温が急降下し、空中には、バスケットボール大の氷の塊が浮遊しベルギカ号の狙いを定めた。これは、『王』が精霊の力を借りて起こした現象だ。
「攻撃来るぞ! メイジ組はエア・シールドを貼り機関を守れ!」
ついに、百を越す大量の氷の塊が、ベルギカ号に向けて放たれた。
メイジ達は、攻撃に対し蒸気機関を守るように『エア・シールド』を展開した。
「機関室、もっと石炭を食わせろ!」
「やってます!」
ベルギカ号の要。機関室では、若い水兵達が煤塗れになりながらも、せっせと石炭を火室に放り込んでいた。
煙突から黒煙が上がると、艦尾のプロペラが勢い良く回り、ベルギカ号は更に加速した。
クククンッ!
スピードに乗ったベルギカ号は、無事、回避したと思ったが、氷の塊はカーブを描き艦尾に殺到した。
「氷弾来まーーす!」
「曲がっただと!?」
ガガガガガガン!
氷の塊は艦尾を蜂の巣にし、氷の塊や壊れた木片で、作業をしていた水兵に負傷者を出した。
「艦尾に被弾っ! 負傷者多数!」
「直ちに負傷者の収容と、艦尾の応急処置を」
「了解!」
ド・ローテルの周辺では、士官達が慌しく行き来していた。
「艦長。ロケット砲の準備が整いました」
「よし、直ちに発射せよ」
ベルギカ号最大の牙。24連装ロケット砲が『王』に照準を合わせた。
……
『海上の目標に対しての攻撃だ。これより本艦は30度傾斜する。乗組員は何かに掴まれ』
『拡声』の魔法で、艦内に警告を出す。
「戦闘。厳しいみたいね」
食堂では、シュヴルーズがテーブルの下に隠れながらのん気に語った。他の学者達も各々が考えうる限りの方法で傾斜に備えていた。
「さ、さっき、血塗れの人が担がれて医務室の方へ向かっていました」
エレオノールはガタガタと震
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