第五章
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途中の道でだった、随分とちゃらい恰好をした茶髪の中学生位の少女が真帆の前まで来て言ってきた。
「あんた素直やね」
「?何あんた」
「私?私は男の子やで」
ぎりぎりまで短いデニムの青のミニスカートとロングヘア姿で言う、身体つきも女の子のもので顔も同じだ。やや釣り目であるが顔立ち自体はいい方だ。
「見ての通りね」
「いや、あんた女の子じゃない」
すぐにだ、真帆は言い返した。
「どう見ても」
「そやから男の子やで」
「だから女の子でしょ」
胸もあるし他の身体つきもだ、それで言うのだ。
「ミニスカートだし」
「ズボンやで」
「いや、ミニスカだから」
また言う真帆だった。
「髪の毛も長いし」
「短いやろ」
「滅茶苦茶長いわよ」
見れば腰まである、茶髪だがちゃんとセットしていて身体全体がちゃらいがそれでも清潔な感じである。メイクも濃い。
「しかもちゃらいし」
「ナチュラルやろ」
「何処がよ」
またこう返す真帆だった、そして真帆はこのことも指摘した。
「メイクも濃いし」
「ナチュラルやろ」
「全然よ、というかね」
「というか?」
「あんたさっきから逆のことばかり言ってるじゃない」
「だってうち天邪鬼やないし」
「天邪鬼?」
「そやで、その妖怪やないから」
ラップを踊りつつ真帆に話す、見れば実に落ち着きがない。
「何もないで」
「あんた妖怪なの」
「ちゃうで」
「いや、あんたさっきから逆のことばかり言ってるから」
それでとだ、真帆は少女に返した。
「それだとね」
「妖怪やないっていうの」
「普通に言ったら妖怪でしょ」
逆に言わずにというのだ。
「そうでしょ」
「ちゃうで」
「逆だからその通りになるわね」
もう真帆もわかることだった。
「つまりは」
「そう言うん」
「言うわよ、というかあんた妖怪って言うけど」
このことについてだ、真帆は言うのだった。
「悪いことするの?」
「するで」
ラップを踊りながらの返事だった。
「うちは」
「しないのね、じゃあいいわ」
「そう言うんやね、けどな」
妖怪は自分の本音を言われて面白くないと思ったがそれでもだった。
それを言った真帆にだ、こう返した。
「あんた素直やっていうのはな」
「素直じゃないっていうの」
「それは嘘やで」
「本当だっていうのね」
「素直になったらあかん」
つまり素直になれというのだ。
「見ていて落ち着くわ」
「気が気でないっていうのね」
「女の子は素直になったらあかん」
こう真帆に言うのだった。
「それが最悪やしな」
「一番いいっていうね」
「うちが言いたくないのはそのことや」
真帆に笑って話す。
「そういうことでな、もう会わん様にしような」
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