第三章
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「偶然に」
「そうなんだ」
「そうよ、じゃあいいわね」
「これからだね」
「阿倍野に行くから」
大阪市阿倍野区にというのだ。
「いいわね」
「そういえば阿倍野区って大阪じゃいいところだよね」
「高級住宅街の一つよ」
「そうだったね」
「帝塚山と並ぶね」
「そうだったね」
「そこに今から行くから」
こう岸田に言うのだった。
「いいわね」
「うん、ただね」
「ただ?どうしたの?」
「ええと、平田さんの服って」
ここで岸田は真帆の今のファッションを見た、見れば。
ピンクや水色で身体全体を覆う感じでしかもあちこちにフリルが付いている。岸田は真帆の今のファッションを見て言うのだった。
「ピンクハウスかな」
「そうよ」
その通りだとだ、真帆は答えた。
「私このブランド好きだから」
「それでなんだ」
「着てるのよ」
「そうなんだ」
「似合ってるかしら」
真帆は不安になった顔で岸田に問うた。
「それで」
「うん、似合ってるよ」
岸田は感じたものをそのまま答えた。
「充分ね」
「そうだといいけれど」
見れば胸はピンクハウスでも目立っている、真帆の小柄さとその泣きそうな垂れ目と胸は今も健在だった。
「今日は特に気を使ったし」
「そうなんだ」
「一張羅出して」
聞かれないのに言い出した。
「お風呂入って髪の毛もセットしてメイクもね」
「あれっ、何かね」
岸田は真帆の赤くなって俯いた顔での言葉に突っ込みを入れた。
「随分熱心に身だしなみ整えたんだ」
「だ、だって二人で行くのよ」
真帆は顔を真っ赤にして俯いたまま答えた。
「ボディーガードで連れて行ってあげるんだから」
「それでなんだ」
「そうよ、だからね」
自然と小さな声になっていた。
「念入りにしたのよ」
「叔父さんのところに行くから」
「そうよ、じゃあ今から」
「うん、阿倍野までね」
「そうするわよ」
こう言ってだった、真帆は岸田の手を取ろうとしたが。
咄嗟に手を引っ込めて駅の方を指差して言った、そうしてだった。
二人で大阪駅までの電車に乗ってだった、その後は。
大阪市の地下鉄で阿倍野まで行った、そうして阿倍野区の高級住宅街に入った。そこから叔父の家に行ってだった。
真帆は母からの届けものを叔父に渡したが。
叔父は彼女の隣にいる岸田を見て姪に問うた。
「あの」
「どうしたの?」
「そこの彼は真帆ちゃんの」
「ボディーガードだから」
真帆は叔父に必死の、真っ赤になった顔で即座に言った。
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