『霊長類 浅倉南へ』な話
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極めて低い。
ピッチャーマウンドでは前を見ているし、バッターボックスでは背中をこちらに向け続けることになる。角度よし、距離もよし。
ここで見ている限り、ファールボールがたまたまこちらに飛んでこない限りは大丈夫だろう。
――カキーン。
(うわっ)
総一郎は驚き、コンクリートの手すりに隠れるようにしゃがみこんだ。
ゴンという音と、衝撃。
(……!?)
彼の大きなファールボールが、階段の手すり部分に直接命中したようだった。
(限りなく確率がゼロに近いはずの事象が起きたぞ……いったいどうなっている)
総一郎は念のため、少し時間をおいてから顔をあげた。
彼の打順は終わっていた。塁にはいなかったので、残念ながら凡退してしまったようだ。
バックネット横にある黒板のスコアボード。
並んでいるのは、上段も下段も「0」の文字。
隼人は会心のピッチングを続けている。
しかし打線も総一郎の学校のエースを攻略できず、均衡状態となっていた。
(うちの学校、進学校のわりには運動部も強いからな)
生徒会は、『壮行会の開催』や、部活動の活動報告が載る『会報の編集・発行』も大事な仕事である。そのため、おのずと各部活動の成績にも詳しくなってしまう。
総一郎の学校の野球部は、昔からまあまあ強い。
昨年夏の地方大会もベスト十六に入っており、今期も評判は悪くない。今日投げているエースも軟投派ではあるが大崩れすることが少なく、打線もかなりの破壊力があると聞いていた。
(うちの打線を抑えるのは大変なはず。隼人君はすごいかもしれない)
まだ三年生が引退していないのに二年生でレギュラー、しかもエースと聞いていたため、きっと良い選手なのだろうとは思っていたが、それを直に確認できるというのはうれしい。
総一郎は顔をほころばせながら観戦を続けた。
均衡が崩れたのは、6回表だった。
隼人のレフト前シングルヒット、および二塁への盗塁から打線がつながり、彼の学校に1点が入った。
(たしか打順1番というのは、出塁率が高くて走れる選手が適役だったはず。彼、バッターとしてはそういう選手ということなのだろうな)
彼についての新しい知識が増えていくのもありがたい。
流れは隼人の学校へ傾いたと思われた。
隼人の今日の調子を考えると、このまま試合が終わってもおかしくないと総一郎は思っていた。
ところが。
(ん?)
8回裏、隼人の快速球にタイミングが合ってきたのか、それとも彼が疲れて球威が落ちてきたのか。先頭打者がセンター前ヒットで出塁し、二人目の打者もレフト前ヒットで続いた。
その後送りバントでランナーは進塁。隼人は初めて三
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