『霊長類 浅倉南へ』な話
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られる程度の知識はついた。
それに加え、野球漫画『MAJOR』全七十八巻と『タッチ』完全版全十二巻も購入しており、金曜日と土曜日で読破。野球で起こりうるドラマもある程度は把握している。
死角はない。
隼人の学校のチームが、試合前の練習をおこなっている。
マウンドの上にはもちろん彼の姿。背番号はエースナンバーの一番をつけていた。
オーバースローの投球フォームはよどみがなく、腕もしなっているように見える。
(速い。何キロ出ているのだろう)
キャッチャーミットにボールが吸い込まれるたびに、都度気持ちのよい音が総一郎のところまで届いてくる。
受けているキャッチャーがときおり大きくうなずいて返球しているので、今日の調子は悪くないのだろうと思われた。
(しかし……。野球のユニフォームというのは、体の線が出すぎじゃないか?)
今までそんなことは気にしたことがなかった総一郎だったが、彼が着ているとなると、どうしても注目してしまう。
しなやかそうな肩や腕の筋肉は、一緒に勉強をしたときにも見ている。免疫はあった。
だが問題は下半身だ。ユニフォームがピッチリしているので、筋肉が発達した臀部や太ももなどが強調されている。それでいてスタイルの良さに起因するシャープさもあるため、そのシルエットは絶妙なバランス。
非常にけしからん姿である。
(ああ、いけない。こういう見方は真面目にプレーしている彼に失礼だ)
総一郎は一度首を振った。
練習が終わったのだろう。選手たちがいったんベンチに引き上げていく。
戻る途中、隼人に対し他の選手たちが笑顔で何かを言い、背中や頭をポンと叩いていた。
隼人以外は全員三年生なのか、それとも同じ二年生も混じっているのかはわからないが、彼もそれに対し笑顔と軽い会釈を返していたようだ。絆が固そうに見える。
(……)
隼人と話すときはいつも一対一だったので考えたことはあまりなかったが、当然、彼には部活のチームメイトもいれば、クラスの同級生もいるのである。
あの性格だ。きっと友達も多いのではないだろうか。
今、知らない人間たちが彼とコミュニケーションを取っているのを見ている。
微笑ましいという思いとともに、少し乾いた寂しさのような、なんとも言えぬ感情が沸き起こってきた。
これは――。
(嫉妬か。潔く認めよう)
こればかりは仕方ない。
彼とは、学校も違えば学生としての属性もまったく異なる。知らない領域や知ったとしても入り込めない領域が広大であることは、前からわかっていたことだ。
今発生した問題ではないため、ここで悩んでも意味はない。
頭はサッと切り替わったが、直後、総一郎の目は驚きで見開かれた
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