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だいたいチーバくんのおかげでややこしくなった話
『霊長類 浅倉南へ』な話
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悪いと思って志願したのだろうな)

 彼が突然あの場所に登場した理由がわかった。
 他にも、こちらから試合の細かい感想を伝えたり、学校の敷地に初めて入った感想を聞いたり。
 一通りのやりとりが終わると、メッセージは一度止まった。

 そろそろ寝る旨のメッセージを送ろうか。
 そう思ったときに、彼からこんなメッセージが来た。

『あ、お前けっこう私服ダサいときもあるんだな! 安心した!』

(……!? 私服だと思っていた……だと?)

 あれはどう見ても用務員の格好だったはず。
 そもそも学校なのだから私服で来ることはない。制服でない時点で普通は疑うだろう。さすがに私服説は無理があるのでは?

(ああ、そうか。これも彼なりの気遣いなのだろうな。きっと)

 これは気づかないふりだ。総一郎はそう思った。
 すべてわかったうえでのすっとぼけで、こちらに恥をかかせないようにする気遣い。そういうことなのだろうと思った。

(アスリートというのは自分に厳しく、他人に優しい。素晴らしいな)

 総一郎の表情が和らぐ。
 今日は想定外のことが多く神経が張っていた時間が長かったが、すっかり気が休まったような感覚がした。

 が。

(……これ、どう返事をするのが正解なのだろう?)

『はい、ダサいです』でよいのか?
 仰向けでスマホを持った状態でそのまま考えたが、自信の持てる答えをひねり出すことはできなかった。

 やがて寝落ちし、スマホが顔に墜落した。





(『霊長類 浅倉南へ』な話 終)
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