閑話@キャロル
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……ふん、オレを失望させるなよ、セージ」
さらりと一礼を返す青年と、偉そうにふんぞりかえる幼女。
端から観れば、奇妙な構図である。
しかし、当人にとっては欠片も問題にならない。
何故なら、敬意を示す彼、誠治郎はこの少女キャロル・マールス・ディーンハイムに返しきれない恩があるのだから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
彼と彼女の関係は、彼が小さなリストランテで厨房を任されるようになった15歳の頃に遡る。
彼が修行していた、おおらかな人柄の店長がいるそのリストランテで、下ごしらえや目利きなどの一通り学び、合格ラインをこした彼は、時折厨房を任されていた。
その日は雨で、確か店長が早めのシェスタ(昼寝)をした日だったか。
カランカランとドアのベルが鳴り、来たのは一人の少女。
その格好といい、見た目の年齢といい、とても一人でリストランテに入れるような人には見えなかった。
だからだろうか。
女将は旦那である店長を起こそうとせずに、言った。
「セージ、あんたが作って、おまけしてやりな!」
つまりは、料理長が作らない代わりに、値段をおまけしてあげろ、って事らしい。
その答えに、少々安堵しながら、誠治郎は注文に向かった。
…………ダサいと言わないでほしい。
これでも既に料理人としてある程度貰っていたので、彼女が本当に困っていれば立て替えることは出来た。
だが、不必要な出費としては、このレストランの会計はきつい。
…………ちなみに、彼が勤めていたリストランテは、語源になった高級レストランとまではいかないが、ある程度の歴史のあるイタリアのリストランテで、日本円にすると、ディナーフルコースで万札1枚、プラスお酒という価格である。
その内心を押し隠し、彼は笑顔でその少女に問いかけた。
「それで、何か食べたいものはあるかい、レディ?」
それが、キャロルと誠治郎の最初の出会い。
え、一目で原作のキャロルと分からなかったのかって?
いや、言い訳になるが本や画面で見るのと三次元で見るとは又違うし。
そもそもお客様としてきた幼女に絡んだら事案である(失礼)
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…………まあ、下らない自分の過去を振り返るのは後にしよう。
問題はそこではない。
「このケーキは十点満点中七点、酸味が強すぎて俺様向きじゃない。このシャーベットは良いじゃないか、八点やろう」
え、○次元ポケット?と言わんばかりに、彼女は信じられない早さで、回りのケーキを消費している。
その度に、彼は冷蔵庫からケーキに合うアイスカフェラテを出したり、じっくり煮出した暖かい紅茶を出したり、ひっきりなしに彼女の面倒を見る。
半
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