閑話@キャロル
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…………真琴誠治郎が経営する会社『キッチンズ』。
安易すぎる呼び名とは裏腹に、全国どころか全世界のトップシェアを誇る料理店を核とする総合商社。
料理店・料理の商品化、材料の流通などを担う一流ブランドである。
なぜこのような島国の少年が起こした企業が、全世界の料理関連事業のトップに立てたのか…………
「当番組では、食料を原料から製造し、商品にして流通させている当企業の様々な試みの一部をこの番組限定で教えてもらいました〜!」
(…………ああ、あの番組か)
勿論放映前に確認してはいるが、一応の再度の内容の確認のため、液晶テレビから流れる番組を耳だけで流し聞きながら、手は全く止めない。
そう、珍しく誠治郎は、『本気で』料理していた。
ラフな普段着とは対照的に、タイまで締めた純白のコック服で目の前の材料を、『料理』へと変えていく。
刻み、焼き、成形し、徐々に明らかになる、完成形の料理。
普段のふざけた態度はなりを潜め、正確にかつ、素早く調理をする彼の手は、まるで魔法使いのように無駄な工程を省き、かつ丁寧に調理を行っていく。
『寝かせた』パイ生地二枚に、両手で同時に、其々別のフルーツを並べていく。
左右対照的にかつバランスを考えて盛り付けられる、百花繚乱のような色とりどりのフルーツ。
更に、上からこれまた別の材料を流し入れた後、蓋となる生地を乗せ、数秒でそれを閉じる。
パイはまるで、元から閉じていたと言わんばかりに、歪み一つなく閉じていった。
そして、事前に用意した大きなピザ焼き用の木ベラに一つづつ、崩れないように乗っけていく。
そして、直ぐに特製の木炭釜に滑りこむように入れ、焼き上げていった。
同時に、先程まで丁寧に練っていたホイップクリームとカスタードを急速に冷やすために専用の冷蔵庫に入れた。
彼が丁寧に料理をしている理由は一つ。
この企業を支える『屋形骨』の一人(プラス従者)を迎えるためである。
そうして調理を重ね数十分。
最後の料理を完成させたと同時に、彼女は来た。
美しい少女である。
豪奢な金髪を乱雑にまとめ、纏めきれない髪をお下げにして垂らしている少女。
コスプレのような黒い三角帽子に黒いローブ。
それだけ不審な格好をしていても、彼女の整った顔立ちが全てを覆し、総合的に見ると『ちょっと変わった格好をした美少女』という感想で終わる。
(美人は得だな…………)
彼女が到着する一分前にちょうど焼きあがるように設定した釜から、自動的に出てきた焼きたてのパイ。
その焼き上がりを確認して、誠治郎は幼女にしか見えない女性に、綺麗な一礼を返した。
「ようこそいらっしゃいました、キャロル様」
「……
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