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戦国異伝供書
第七十二話 六角家からの話その十五

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「それでじゃ」
「六角家にもですな」
「勝てる」
「兵の数では劣っていても」
「それでもな、少ない兵で勝つには」 
 多くの敵にはだ。
「工夫が必要じゃ」
「そしてその工夫として」
「近江の地の利、六角家のことも知ってな」
「鉄砲と槍もですな」
「考えてな」
 そしてというのだ。
「備えに備えてな」
「向かいますな」
「そうする、しかし色々せねば勝てぬとは」
 猿夜叉は自分達のことを思って言った。
「どうもな」
「辛いですな」
「全くじゃ」
 遠藤にも答えた。
「全く以て」
「小さい家は苦労しますな」
「全くじゃ」
 また言うのだった。
「それを今思う」
「左様ですな」
「四十万石はそれなりでもな」
「六角家は八十万石ですから」
「斎藤家も朝倉家も大きい」
 接する彼等もというのだ。
「そう思うとな」
「当家は小さいですな」
「どうしてもそうなる、その家が生きの頃にはな」
「苦労は避けられませぬな」
「どうしてもな、しかしな」
「何としても生き残る」
「そうする、しかし媚びることはせぬ」
 生き残ろうともというのだ。
「それはな」
「はい、媚びますとです」
「そこから付け込まれるものです」
「人もそうですし」
「家も然りですな」
「その通りじゃ、誇りは失わずな」
 そうしてというのだ。
「生き残ろうぞ」
「全く以てその通りです」
「ではその様にしてです」
「これからもやっていきましょう」
「当家は」
 家臣達も猿夜叉の言葉に頷いた、猿夜叉はとかくこれからのことを考えそうして動こうとしていた。そしてそれは間もなくになろうとしていた。


第七十二話   完


                  2019・11・1
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