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今年も同じく
第一章
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               今年も同じく
 根室千佳は年末に兄の寿に言った。
「じゃあ今からね」
「もう行くんだな」
「ええ、今のうちに広島のお祖父ちゃんのお家に行ってね」
「厳島に行くんだな」
「元旦にね、今年も行くから」
 こう兄に言うのだった。
「参拝に」
「毎年だな、それで紅葉饅頭も食べるか」
「まあね、ただあれ厳島以外でも売ってるから」
 紅葉饅頭、これはというのだ。
「だから別にね」
「厳島名物でもないか」
「広島なら結構何処でも売ってるわよ」
「そういえばそうだよな」
「各種類ね」
「その紅葉饅頭食ったら阪神広島に勝てるかな」
 ここで寿はこんなことも言った。
「僕がそうしたら」
「無理に決まってるでしょ」
 千佳は兄の今の言葉に冷淡に返した。
「そう言って食べてる阪神ファンの人多いと思うけれど」
「阪神は勝ってないな」
「毎年負け越してるじゃない」
「全く、何で阪神は広島に弱いんだ」
 寿は根っからのそれこそ骨の髄までの阪神ファンとしてぼやいた。彼はまさに心の奥底からの猛虎党であるのだ。
「毎年負け越してるな」
「去年もね」
「カープの調子が悪くてもな」
 それでもというのだ。
「負け越すからな」
「だからよ」
「紅葉饅頭食べても意味ないか」
「お店の売り上げに貢献するだけよ」
「それだけか。けれど美味しいからな」
「お母さんから今年も家族分買ってきてくれって言われてるから」
「宜しくな、じゃあ僕は元旦西宮行って来るよ」
 寿は紅葉饅頭の話で自分から言った。
「そうしてくるよ」
「毎年通りね」
「ああ、それでな」
 西宮、つまり西宮神宮に参拝してというのだ。
「阪神の日本一祈願してくるな」
「毎年通りね」
「そっちと同じだろ」
「まあね、私も参拝に行く理由は」
 厳島にそうする理由はとだ、千佳も答えた。
「カープの日本一祈願だし」
「今年こそだな」
「平成の間日本一にならなかったし」
「それ阪神もだぞ」
「そういえばそうよね」
「全く、何で三十年の間日本一になってないんだよ」
 寿は今度はぼやいた。
「昭和六十年からか」
「こっちは五十九年よ」
「長いんだよな、そっちの方が」
「一年だけだけれどね」
「そうだよな」
「折角三連覇したのに」
 千佳は平成の最後の三年のそれのことを思いぼやいた。
「それがね」
「負けたな」
「日本ハムに横浜にソフトバンクにね」
「横浜にはクライマックスでな」
「日本一になるのって難しいわね」
「全くだな、阪神なんてな」
 それこそとだ、寿は自分の愛するチームのことから話した。
「三連覇なんてな」
「してないわよね」
「というかリーグ優勝カープの方が多いだろ」
「そういえ
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