第五章
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「かみさんが俺のコーヒーにぞっこんになってその時の旅行も次の旅行の時も入り浸ってな」
「それが縁になってかい」
「結婚して二十年さ」
「それは何よりだな」
「幸い同じカトリックで結婚も簡単にいったよ」
「それは何よりだね」
クライストもカトリックなのでそれはいいと思った。
「本当に」
「そうだろ、それでな」
「ドイツ語もわかるんだ」
「そうさ、それで尋ねたいことは何だよ」
「そちらの日本人らしき人達だけれど」
その全力で観光を楽しんでいる彼等を見つつ尋ねた。
「日本人ってのはああなのかな」
「ああ、観光に来たらな」
それこそとだ、男はクライストに答えた。
「もう時間を惜しんでだよ」
「観光を楽しんでるのか」
「イタリア料理も食ってワインも飲んでな」
そうしてというのだ。
「それでな」
「街を観て回ることもか」
「全力でやるんだよ、休まずにな」
「そうなんだな」
「シェスタなんか絶対にしないんだよ」
イタリアのこの風習を楽しむことはしないというのだ。
「俺達がシェスタをする時間でもな」
「ああしてだね」
「観光に励んでいるんだよ」
「そうなんだね」
「いや、日本人は働き者なのは有名だがね」
それでもとだ、男は腕を組んでこうも言った。見れば黒い口髭と赤が多いシャツが実にイタリア的である。
「遊ぶことも」
「そっちもだね」
「休まず全力でやってるよ」
「旅行はゆっくりしてもいいと思うけれど」
「俺もそう思うがね」
「日本人はだね」
「そうしてな」
シェスタ、イタリアの風習もせずにというのだ。
「朝から起きて夜までな」
「旅行を楽しむんだ」
「あんた達よりずっと活発に動いてるな」
「ドイツ人よりもかい」
「むしろあんた達はのんびりしてるよ」
そうしたものだというのだ、ドイツ人の観光は。
「イタリアを自分の第二の故郷みたいに感じているだろ」
「そこまでは、いや」
クライストは男に自分の言葉を訂正して述べた。
「言われてみれば」
「そうしたところあるだろ」
「毎年一千万は旅行に来ているしな」
「それで昔からやたらイタリアに関心あるだろ」
「神聖ローマ帝国の頃から」
「そうした風だからな」
「僕達の観光はゆったりしているか」
男に対して答えた。
「そうなのか」
「そう思うぜ、けれど日本人はな」
「何度もイタリアに来ていないか」
「そうかも知れないな、ただな」
「ただ?」
「日本人は何処でもああらしいな」
やはりまるで味わい尽くすかの様に観光に勤しんでいる彼等を見つつ話した。
「欧州でもアジアでもアメリカでもな」
「つまり何処でもか」
「日本の中でもな」
「ああしてなのか」
「もう休む間もなく飲んで食って」
「あち
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