第四章
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「少なめです」
「そうなんだね」
「他のアジア系の人達と比べても」
「少ないんだ」
「はい、そうです」
「そのことは知らなかったよ」
「ですがよく動かれますよ」
日本人、彼等はというのだ。
「むしろ我々より活動的かも知れないです」
「日本人の勤勉さは有名だね、我が国でもね」
ドイツでもというのだ。
「日本人はいるけれど」
「勤勉ですね」
「我々より長い時間働いてその内容もね」
「凄いものですね」
「うん、けれどだね」
「少食です」
店員はまたクライストに話した。
「あの方々も一品ずつでしたね」
「パスタはね」
「ケーキも召し上がられましたが」
「ワインは一本でね」
クライストは彼等のテーブルをちらりと見てそこは把握していた。
「それでだね」
「はい、ですが」
「それでもなんだ」
「召し上がられる量は」
それはというのだ。
「少なめです」
「それでも勤勉なんだ」
「そうです」
「少し不思議な話だね」
「ちなみにお金の支払いは揉めないですし」
ここで店員は笑って日本人のこの一面のことも話した。
「チップも弾んでくれます」
「気前もいいんだ」
「穏やかで礼儀正しい人も多くて」
「いいお客さん達だね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「少なくとも私に悪感情はありません」
「僕もないね。人種主義者でもないし」
そもそもとだ、彼は話した。
「日本人についてもね」
「悪感情はないですか」
「うん、ただ日本人が少食とは知らなかったから」
「そのことについてですね」
「思っただけだよ」
こう話してだった、そのうえで。
彼は支払い、チップも含めたそれを終えて店を出た。その日本人達のことは少し覚えていたがその程度だった。
だが店を出て暫くして。
クライストは街、今いるトリノの中を歩いているとまた先程の言語を話すアジア系と思われる人達を見た、店の中にいた日本人達とは違うが。
彼等は街中をしきりに見てそうして活発に動き回っていた、その全力で楽しんでいる様子を見てだった。
クライストはふと街の市民と思われるイタリア人の中年の男に声をかけた。今度もドイツ語だったが。
「男のナンパは受け付けないぜ」
「安心してくれ、僕もその趣味はないよ」
笑ってだ、クライストは男のドイツ語での言葉を否定した。
「尋ねたいことがあって尋ねたんだよ」
「ああ、そうか」
「うん、それにしても貴方はドイツ語がわかるんだ」
「俺のかみさんがドイツ人でな」
「それでわかるんだ」
「俺の家は喫茶店をやってるが旅行で来たかみさんが店に入ってな」
それでというのだ。
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