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戦国異伝供書
第七十二話 六角家からの話その十

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「父上がどう思われるか」
「鉄砲のことについても」
「それが不安じゃ」
「若し殿が首を縦に振られなければ」
「鉄砲も揃えられぬ」
 今欲しいというそれもというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「このことも父上とお話をしたい」
「左様ですか」
「鉄砲は高いがな」
「それでも多く欲しいですな」
「幸いこの近江は中々豊かな国じゃ」
 このことは浅井家の領内もだ、琵琶湖の水がよい田畑をもたらしそれにそのブ和子の水運もあるからだ。
「それで当家もそれなりに銭はある」
「はい、特にです」
 宮部が言ってきた。
「北陸と都を結ぶ道が」
「そして東海から北陸に行く道もあるしのう」
「そこに関をもうけていますので」
 だからだというのだ。
「銭がもたらされています」
「左様じゃ、特に西の道がある」
「鯖街道ですな」
「あの道があるからな」
 その北陸そして若狭と都を結ぶ道があるというのだ。
「街も栄えておるし」
「銭はあり申す」
「だから鉄砲もじゃ」
「買おうと思えばですな」
「結構買える、だからな」
 それ故にというのだ。
「揃えたいが」
「殿がどうかですか」
「それじゃ、父上が何と言われるか」
「どうもです」
 宮部は猿夜叉にどうかという顔で述べた。
「殿は今の戦のままです」
「槍に弓矢じゃな」
「そうしたものの戦が念頭にあられ」
「鉄砲についてはな」
「お考えの中にないかと」
「そうじゃな、だからな」
 それでとだ、猿夜叉は宮部に話した。
「わしから説得してみる」
「そうされますか」
「そしてな」
「当家に鉄砲を」
「そうしたい、また織田家のことを話すが」
 ここで信長の話になった。
「織田殿はもう鉄砲をかなり揃えておられるそうじゃな」
「その様ですな」
「どうも」
「織田家の槍は相当長いと聞きますが」
「他の家から見れば考えられぬ位に」
「そして具足もよいとのことですが」
「鉄砲もですな」
「多く持っておられるとか」
「もう少なくとも何百もお持ちとのことじゃ」
 織田家の鉄砲の数はそれだけあるというのだ、猿夜叉は家臣の者達に対してこのことを考える顔で話した。
「そこまで持っておられるとはな」
「若し何百もの鉄砲を戦の場で一斉に使えば」
「そうなればですな」
「凄まじい音が戦の場に響き」
「驚くことになりますな」
「それだけで違うか、思えば」
 猿夜叉はさらに話した。
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