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戦国異伝供書
第七十二話 六角家からの話その八

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「非道ではないか」
「言われてみますと」
「お主もそう思うな」
「はい、備前の宇喜多殿もかなりの御仁ですが」
「毛利殿はな」
「殿が言われる様に」
 まさにというのだ。
「謀に人を殺めることも」
「常であるな」
「それではです」
「悪人も悪人でな」
「かなりの御仁で」
 それでというのだ。
「殿が言われることもです」
「頷けるであろう」
「はい」
 遠藤も否定しなかった、もっと言えば出来なかった。
「あれでは」
「あの様な行いは」
「奸悪無限とも呼ばれるが」
「その評判通りに」
「無道に過ぎる、若し当家が毛利家の傍におれば」 
 そうであればというと。
「瞬く間にな」
「滅ぼされていますな」
「あの謀でな」
「そうなっていますな」
「あの家が傍になくてよかった」 
 猿夜叉はこのことを心から思って述べた。
「まことにな」
「左様ですな」
「わしは謀はどうも不得手じゃ」
 自分から言った言葉だった。
「そちらはな」
「はい、若殿はです」
 遠藤は猿夜叉にはっきりと答えた。
「謀の類はです」
「手を出さぬ方がよいな」
「ご気質として向きませぬ」
 どうしてもというのだ。
「一途で清廉な方はです」
「謀に向かぬな」
「どうしても、ですから」
「それでじゃな」
「そうしたことはされぬことです」
「その方がよいな」
「毛利殿とはかなり相性が悪いかと」
 遠藤はこうも言った。
「ただ。毛利殿ことがおわかりなら」
「それならじゃな」
「最初から気をつけられて」
「信じぬことじゃな」
「決して、そして毛利殿の様な御仁と何かあれば」
「身の回りにもじゃな」
「気をつけられて下され」
 そうしてもらいたいというのだ。
「我等も若殿をお守りしますので」
「そうしてくれるか」
「その時は」
「それがしも毛利殿のことは聞いていますが」
 新庄も毛利元就について述べた。
「戦にはお強く政はよいですが」
「民には寛容でな」
「善政を敷かれていますな」
「うむ、しかしな」
「あの謀は」
 遠藤もこう述べた。
「あまりにも非道でありまする」
「奸悪無限は噂ではない」
「まことにその通りですな」
「民に善政を敷かれておるのはよいが」
 それでもというのだ。
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