TURN30 左遷その七
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「ドクツが勝とうが負けようがね」
「大事なのはそうではありませんね」
「別のことですね」
「そうさ。我がドーラ教がどうなるか」
問題はそこだというのだ。
「それが問題なんだよ」
「総統閣下はドーラ教を弾圧されています」
「それが問題です」
腹心達は顔を曇らせてヒムラーにそっと囁いた。
「カルト教団とみなして」
「そのうえでそうされていますので」
「やれやれだよ。ドーラ様を信仰されないとはね」
「はい、由々しきことです」
「まさにドーラ様こそが最高にして唯一の神だというのに」
「あの娘への懐柔をしたかったんだがね」
ヒムラーは今本性を出した。レーティアへの忠誠心を。
「一時ってことだね」
「それはバルバロッサ以降ですか」
「それからになりますね」
「そうよ。それからだよ」
こうも言うのだった。
「もっとも。さっきも言ったけれど俺はね」
「バルバロッサの成否は問題ではない」
「そうなのですね」
「若し今のドクツが倒れてもどうにでもなるさ」
バルバロッサにドクツの全てがかかっているというのが他のドクツの高官達、国家元首であるレーティアも含めて共通した考えだった。
だがその中でだ。ヒムラーだけはこう言うのだった。
「俺の場合はね」
「そうですね。我々にしてはですね」
「それでも構いませんね」
「もう一人のあの娘。ソビエトのね」
今度はカテーリンだった。
「あの娘もこれがあればね」
ヒムラーは手袋を取った。その手には。
赤い石があった。カテーリンのものと同じものがあった。その石を見ながらだ。
ヒムラーは満足している顔で笑ってだ。こう腹心達に言ったのである。
「どうにでもなるさ」
「はい、我々が居座るべき国家も」
「そこもですね」
「ソビエトに勝てばそのままドクツのあの娘を洗脳していく」
バルバロッサ作戦が成功すればだというのだ。
「そしてソビエトが勝てばね」
「ソビエトのあの娘をですね」
「洗脳しますか」
「そうすればいいだけさ」
何でもないといった口調だった。
「じゃあいいね」
「はい、それでは」
「そうしましょう」
「俺のこの石と」
ヒムラーはまた見た。己のその右手を。
そしてそのうえでだ。こうも言ったのだった。
「ここに眠るサラマンダーがあれば」
「誰も手を出せませんね」
「例えレーティア=アドルフでもカテーリンでも」
「そうさ。出来る筈がないさ」
自信に満ちた声だった。倣岸なまでの。
「じゃあ早速探すか」
「はい、それでは」
「そうしましょう」
こうした話をしてだった。彼等は。
氷の中を調べていった。だがこのことは。
レーティア達は気付いていなかった。無論グレシアもだ。
レーティアはバルバロッサ
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