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ULTRASEVEN AX 〜太正櫻と赤き血潮の戦士〜
4-2 マリアのロケット
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気にしていることがあった。
記憶喪失。
家族と健やかで平和な日々を過ごし、幸せに満ちている人間からすれば、それは今まで生きてきた証が消え去ってしまうという残酷なこと。自分が何者なのか、どこで何をしていたのかが分からなくなる。
でも…同時にこうも思えていた。
身を裂くような、悲劇の記憶も覚えていない。それは、ある意味幸せなのではないだろうか。
その頃…
「刹那よ、お前がわしに言っていた作戦とやらの準備は万全か?」
黒之巣会のアジトにて、黒之巣会のリーダーである天海が刹那に状況の説明を求めてきた。
「いえ…次にもう一段階踏む必要があります。再び帝都付近で騒ぎを起こし、そこに帝国華撃団をおびき寄せます」
鋭く長い爪を鳴らし、刹那はニヤッと気味の悪い笑みを浮かべながら天海に報告を続けた。
「前回の戦いで奴らの心を読み取ったところ、帝国華撃団とやらは創設されてまだ日の浅い集団、しかも隊員たちの個性がそれぞれ強すぎるがゆえに、意見がまとまりにくい烏合の衆。かろうじて隊長と副隊長という鎖で繋がりあっているだけの関係です。
隊長の大神一郎と、副隊長のマリア・タチバナの間の不和を促せば、一瞬で瓦解できるでしょう」
「さすがは兄者。敵の心を読み、その弱点を的確に突く。兄者の右に出る策士はいない!」
花組の弱点を把握しきってみせたことに、その場に居合わせていた羅刹が兄への尊敬を改めて感じた。
「よし、首尾は整っているというわけだな。
刹那よ、その作戦を持って帝国華撃団を一掃するのだ。我々の大願を阻む愚か者は、たとえ女子供であろうと容赦はするな。全員殺せ。あの赤い巨人も現れ次第、その首を取るのだ」
「ありがたき幸せ」
お任せくださいではなく、ありがたき幸せ。その言葉の言い回しは、まさに次の作戦が刹那にとって実に好みの内容の任務であるという意味を含んでいた。敵の身も心もいたぶり蹂躙する…残虐な刹那らしい喜びだった。
「羅刹、お前はミロクとは別に『天封石』の地点を特定し、見つけ次第破壊するのだ」
「は!」
「天海様、私はいかがいたしましょう」
すると、闇の奥より、葵叉丹が天海たちのもとへ歩み寄ってきた。
「叉丹、おぬしには刹那の魔装機兵の最終調整を行え。だが貴様は先日の失態もある。ミロクか羅刹のどちらかが『天封石』の地点を特定するまでの間に完了するのだ」
「お任せください。それだけの時間さえあれば問題ありません」
叉丹は天海の前で跪き、主の命令を迷わず受託、すぐに作業にかかるために天海の部屋を後にした。
(さて、刹那程度に後れは取るまいよな………『ジン』)
去り際に、赤い巨人のことを頭に浮かべながら。
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