暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第一章 〜暗雲〜
八十九 〜暴かれる真相〜
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 兼定を上段に構え、振り下ろした。
 ……蔡和の頭上ぎりぎりのところまで。
 蔡和はそのまま気を失い、倒れ込んだ。
「歳三さま! 何故です!」
「明命の言う通りなのだ。こんな奴、生かしておく価値もないのだ!」
「明命、鈴々。生かしておく価値はないが、斬る価値もない。剣を穢すだけだ」
「…………」
 他の者も黙ってはいるが、この処置には不服のようだ。
「閉じ込めておけ。監視は怠るな」
「はっ!」
 兵らが、蔡和を運び出していく。
「ご主人様。せめて我が手で、孫堅殿の無念を晴らしたく思います」
「私も同感ですな、殿」
 止めなければ、愛紗も彩も飛び出しかねない勢いだ。
「待って下さい。短慮は禁物ですよ」
「短慮とは何だ、禀!」
「まーまー、ちょっと落ち着きませんか彩ちゃん?」
「しかしだな、風! このままでは、腹の虫が治まらん!」
 そんな彩を諭すように、禀はゆっくりと語る。
「蔡和を始末するのは簡単な事です。ですが、それが本当に正しいと言えますか?」
「だが、奴は殿にも危害を及ぼそうとした一味だ。それだけでも死に値する!」
「確かに、歳三様に対する所業は許し難いです。ですが、怒りに任せて首を刎ねれば、どうなるでしょうか?」
「……そ、それは」
 言葉に詰まる彩。
「たぶんですねー、蔡瑁さんはそれを利用するでしょうね。お兄さんが、一族の者を闇討ちにしたとか」
「馬鹿な! それをしようとしたのは奴らの方ではないか!」
「では、それを公に証明できる人はいるのですか、愛紗ちゃん?」
「そ、それは奴が証拠で……」
「その通りですねー。では、何故その証拠を消そうとするのですか?」
 風の言葉に、愛紗らの顔から血の気が失せた。
「私達が今知らなければいけないのは、事実だけです。それに、孫堅殿を亡き者にしたのは別の人間です」
「とにかく、風達は大きな罠にかけられたのですよ。風は罠にかけるのは好きですが、かけられるのは大嫌いですからねー」
「……まさか、歳三様」
 紫苑に、私は頷く。
「ああ。恐らくは此度の反乱自体、仕組まれたものだな」
「では主。趙範らの事も、韓玄殿が討たれた事もその一つだと?」
「……わからぬ。が、罠を罠と見せぬ為の手立て……その可能性はあろう」
「うー、蔡瑁の奴、許せないのだ!」
 壁を殴りつける鈴々。
 パラパラと、その一部が崩れる程に。
「鈴々。黒幕は蔡瑁殿ではないと思いますよ?」
「どういう事なのだ、禀!」
「まず、蔡瑁殿にそこまでの才覚があるか、という事です。如何ですか、紫苑殿?」
「ええ、そうね。自分と一族の権力とか栄華には熱心だけど……此処まで思い切った手を打てる人物ではないわ」
「それに、覆面の軍師というのも気になりますねー。絶対に正体を突き止めてやるので
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