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無題

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 特異点と化した旅行先でも慌ただしいマスターからの誘いを受け、ビーチへと足を向ける。キャスタークラスだからだろう、据わりの悪いアロハシャツを着用しているのは偏に、少女がお揃いだと笑ったからに他ならない。全く、夏の休暇じゃなかったのかねえ。

「ね、綺麗でしょ?」
「そうだなあ」

 白い砂浜に照りつける日光、腰元で結ばれたシャツとショートパンツから除く健康的な小麦色の肌。それから、カルデアではあまり見られぬ年齢相応であろう小生意気な笑顔が実に眩しい。

「キラキラしてて、空も海も澄んでて。キャスターと一緒に、この景色を見たかったんだ」
「……そうかい」

 虚を突かれた。他のサーヴァントの姿がなく、照れ混じりに見上げてくるのはつまり――ああ、そういうことかよ。情けなさを誤魔化すためにわざとらしい溜息を吐き出し、すぐ傍に感じる熱を掴む。

「ちょっくら水遊びでもしていこうや、お嬢さん?」
「えっ? キャスター、クー! ええ?」

 急な話題転換に驚くマスターを引きずって波打ち際で静止する。己の名前を呼ぶ声が疑問に満ちてゆく中、ルーンを使って少女に向けて海水を飛ばした。もちろん加減はしてやったが、ぽかんと間抜けな顔が覗く。煽るよう敢えてわかりやすく口端を上げてやれば、予想通り勝ち気な瞳が煌めいた。偶には甘やかしてやりますか。

 ――やれやれ。肩を竦めた呆れ混じりの声は、はしゃぐ琥珀色と天色に届くことなく漣へ溶けて消えた。




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