暁 〜小説投稿サイト〜
超速閃空コスモソード
番外編 黒狼の正義
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て間も無い少女の瞳を射抜く。

『新兵か』
「……は、はい」
『指は動くか。操縦桿は握れるか』
「……はい」
『なら手を貸せ。奴らを潰す』
「……」

 分かっている。いくら隊長機を落とされ、この戦場で孤立しているからといって、お尋ね者の言いなりになるなど軍人としては余りにもお粗末だ。パイロットの適性云々どころの問題ではない。
 だが、選り好みをしていられる場合でもない。自分と同様に指揮系統を見失った新兵達は、ほとんど戦死してしまった。残る正規パイロット達も皆、危機に瀕している。

 この宇宙海賊が、少なくとも自分よりは場慣れしているというのなら。これ以上の被害を食い止められるのなら。
 誘いに乗り、この海賊を利用することもやむを得ないはず。そう、これは緊急時ゆえの苦肉の策なのだ。

 ――大丈夫。私、悪くない――

「わかり、ました」
『えらく間が空いたな。……まぁいい』

 その一心で顔を上げるメドラを、キャノピー越しに一瞥しつつ。宇宙海賊は異形の群勢に視線を向け、操縦桿を握る手に力を込める。

 数十年も前から人類の敵として、多くの命を蹂躙してきた異形の生命体。彼らがいる限り、この宇宙に安全な場所はないとされている時代の中で――彼は流浪の戦士として、独り星の海を渡り歩いてきた。
 こんな修羅場など、潜り抜けて当たり前。それが、セドリック・ハウルドという男の「普通」なのである。

『お前、前進できるか。左右に曲がれるか』
「……バカにしてるんですか。確かに適性はないですけど、ちゃんと飛ばせる訓練くらい受けてます!」
『だったら十分だ。お前、真っ直ぐ飛んで「餌」になれ。俺が「罠」をやる』
「……」

 死ねと言われているようなものだ。さすが宇宙海賊、乱暴にも程がある。
 ――だが、彼に逆らったところで何も状況は好転しない。加えて、一度死に掛けたこともあり、メドラはすでに通常の新兵とは異なる精神に達していた。
 彼に従おうが、従わまいが。ここで死んで両親に会えなくなるなら、同じことであると。

「……これで私が死んだら、あなたの懸賞金がさらに増えますからね」
『それも悪くねぇな』

 皮肉たっぷりに、宇宙海賊はそう返してくる。いちいち嫌味な男だ。
 だから、敢えて話に乗ってやる。乗った上で必ず生き延びて、吠え面かかせてやる。

 急加速に備え、エンジンを噴かせるメドラ機が、そう告げていたのだろう。期待の挙動から彼女の胸中を察した宇宙海賊は、薄ら笑いを浮かべ敵方に視線を移す。

 ――いい性格してるぜ――

 口元を歪めて嗤うならず者は、骨のある新兵に一番槍を託し、滑るように上昇していく。
 そんな彼を見上げながら、メドラはフットペダルを押し込み――異形の群れへと肉薄して
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