暁 〜小説投稿サイト〜
超速閃空コスモソード
番外編 黒狼の正義
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
た。安全な内地で、事務員として細々と暮らしていくつもりだった。
 しかし、パイロット不足に喘ぐ軍部は、そんなメドラを見逃してはくれなかったのだ。本来ならコスモソードのパイロットとしては適性がないにも拘らず、「数合わせ」のために転属させられてしまったのである。
 わけもわからないままコスモソードに乗せられ、わけもわからないまま戦わされ、わけもわからないまま死んでいく。そんな彼女の受難は、この時代の不条理を凝縮したかのようであった。

 あまりに儚く、一瞬にも満たない15年間の人生。その終幕を前に、彼女は走馬灯を見ることさえ叶わぬまま――異形の牙に、

「いやぁあぁあっ――あ!?」

 幼い命を摘み取られ、なかった。

 闇を裂くように翔ぶ、灼熱の一閃。漆黒の殻に守られた異形の身体を、容易く焼き斬るその剣は――少女に迫る牙を、一瞬のうちに遠ざけてしまう。
 レーザー砲によって撃ち抜かれた宇宙生物は、瞬く間に命というしがらみから解放され、天に召されて行く。メドラ機からゆっくりと離れ、星の海を漂う黒の骸が、徐々に少女の視界から消え去っていった。

「えっ……!? あ、れは……」

 異形の災厄から少女を救い、魔の物を撃ち倒した熱線。その一撃が来た方角には――こちらを目指して翔び続ける、1機のコスモソードの姿があった。
 しかしそれは、星間連合軍のものではない。本来なら純白に塗装されているはずのその機体は、闇のような漆黒に塗りつぶされている。

 ――それは元々事務員志望であり、パイロットとしての知識にも疎いメドラでさえも、よく知っている姿であった。

 星間連合軍から奪ったコスモソードで、あらゆる星を渡り歩く流離(さすら)いのならず者。彼は人類の矛を私欲の為に操り、各惑星で悪逆の限りを尽くしているのだという。
 ――「黒狼」の異名を持つ、宇宙海賊セドリック・ハウルド。その悪鬼が操るコスモソードは、漆黒に塗られている。そう、幾度も報じられているのだ。

『おい』
「ひゃいっ!?」

 悪名高い賊の機体が、傍まで近づいてきた瞬間。低い男の声が傍受され、メドラは動転の余り奇妙な声を漏らしてしまった。
 そんな彼女を気にする様子もなく、宇宙海賊は自分達を取り巻く戦況を一瞥する。すでにコスモソードの数は当初の半数以下まで減少しており、メドラと同じ新兵の多くは、現世(うつしよ)から脱しているようであった。

 戦況は――素人同然のメドラから見ても明らかなほどに、芳しくない。その光景を改めて目の当たりにした彼女は、状況が切迫している事実に直面し、息を飲む。
 一方、ただ静かに戦局を見つめていた宇宙海賊は――コクピットの中で目を細めつつ、メドラの方へと視線を移した。数多の死線を潜り抜けてきたならず者の眼差しが、戦を知っ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ