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血戦・姫騎士ゾンビVSサムライオーク〜そして全てが首になる〜
本編
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元でかすかに疼いている。
 故に変わり者は、この剣を。己の物とした。鍛錬を重ね、敵を斬り続け。片腕でも扱えるようにした。

 オークには当然知る由もないが。その刀は、遥か東方の島国では珍しくもないものであった。
 かつて僅かに西方に流れたその刀は、「サムライソード」として恐れられ、扱う者は東方の言葉に倣い、「サムライ」と呼ばれていた。すなわち、このオークも。誰もが認めぬであろうが、サムライであった。

 洞窟の中に、生ける屍の鬨の声が充満し出す。変わり者を追い詰める、第二波が始まろうとしていた。

 ***

 屍の内で、最初に動き出した者。生ける屍において、生命の根源たる者。腐肉の姫騎士は、誰に促されるでもなく、その振る舞いを成していた。洞窟の最奥に一人佇み、オーク共の掃討は群れに委ねていた。

 姫騎士の脳内では、過去が渦を成していた。
 もっとも、記憶は最早あぶくのようで。浮かんでは消え、消えては浮かび。一度消える度に、姫騎士はオーク殲滅の意志を新たにしていた。

 女はかつて、武芸に長けた姫騎士だった。都でも噂になる程で、嫁の貰い手がないと陰口を叩かれたりもした。
 しかし本人は、陰口を全く意に介していなかった。むしろ身軽で結構と言わんばかりに、民の声に応え続けた。
 東で怪物が出ればこれを始末し、西に盗賊が出れば一隊を率いてこれを成敗した。当然、民からの人気はうなぎのぼり。都の貴族がこれを妬むのは、全くの必然であった。

 そうした策謀の中で、今回の惨禍に繋がる事件は起きた。姫騎士の抹殺を目論んだ貴族が、民の声を謀って過少に伝え、姫騎士の慢心を引き起こさせたのだ。
 慢心は敗北を招き、姫騎士は想像よりも遥かに多いオーク共に囲まれ、膝を屈した。武装と鎧を奪われ、狂った宴へと連れ込まれ、命と尊厳を失った。汚辱に塗れ、仔袋へと変えられ、失意のうちに屍の置き場へと投げ込まれた。

 しかし。なんの因果か。あるいは怨念が引き寄せた必然なのか。不可思議な事象を経て、女は蘇った。
 人ならざる、おぞましき者として。腐肉の輩の、女王として。傅く者は一人としてなく、されど気高き威風を纏い。玉座はなくとも、ただ在るのみでひれ伏させる迫力があった。

 赤と黒で構成された装束は、かつて身に着けたドレスに似た形である。ドレスは鎧によって要所を護られていた。しかしその鎧でさえ、赤に黒。血の泥濘。そこに骨のような灰色が斑に混じった、なんとも不気味な様相であった。
 その傍に、刀はあった。無造作に、姫騎士の手に握られていた。姿は、姫騎士が生前に握っていた物に似ていた。されど。刀身は血肉を吸い上げたかのように脈を打ち、白銀の輝きは赤黒の、おぞましきそれへと変じていた。
 かつては美しく結い上げられていたであろう金髪は、憤怒を示
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