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血戦・姫騎士ゾンビVSサムライオーク〜そして全てが首になる〜
本編
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かつての仲間へ。復讐すべき相手へ。無慈悲に牙を突き立てる。捕食する。
 理性もなく、悲しみもなく。ましてや欲望ですらない。残虐の宴。それのみであった。

 強きオークは立ち向かい、弱きオークは岩肌や裏道へ逃げた。
 しかし生ける屍は。誠に冷酷であった。喰らい、探し、見つけ、殺す。その作業に、淀みというものは全くなかった。かつて人を嬲り倒したオークが、冷たい牙に肉を削がれ。やがて生ける屍へと成り果てて行く。繰り返される度に、屍は増えて。

 もはやオーク共に残された手段は、逃げることのみであった。洞窟の出入り口近辺へ、ゆっくりと追い詰められていく。洞窟から追い出されれば、また塒探しからだ。人間に追い回される生活だ。
 しかし二匹だけ、抗う手段を思い出した者が居た。二匹のオークは恐る恐る洞窟を抜け出すと、ある方角へと走り出した。

 ***

 洞窟から僅かに離れた池のほとりで、一匹のオークが釣り糸を垂らしていた。池に目を凝らしていた。

 呼吸は一定。
 ただ水面を見つめて。
 やがてオークが見る光景は釣り糸の周囲となり。
 その目が光る。
 アタリだ。反応からして、少々手がかかる代物だ。
 すぐさま竿を握り締めるが、腕力には頼らない。
 魚と己の、一本勝負。
 糸を切られぬ程度に暴れさせ、弱らせるのだ。右へ、左へ。魚を遊ばせ……。

 不意の蛮声が、オークから集中力を奪った。かすかな緩みから魚は隙を見出し、餌を食らって逃げていく。
 オークが苛立たしげに、声のした方角を見れば。済まなさそうな顔をした、二匹の同類がいた。目で己の方へと招き、言葉を交わす。やがてオークの顔が険しくなり、そのまま森へと向かった。当然、二匹も付き従った。


 彼のオークは、自分が仲間内で「変わり者」とされていることを知っていた。知っていたが、変えようとは思わなかった。
 女を辱めることよりも、人間を嬲ることよりも。人間の扱う道具の方に興味が湧いた。特に武器の類が気になった。
 いつしか彼は、人から奪った武器を手にするようになった。試行錯誤し、人の言葉で言う「武技」を磨いていった。その行為を楽しむ内に彼は、群れの中では敵なしの強さを手に入れていた。

 それでも多くのオークは、彼を侮蔑した。時には彼を不能扱いする発言すらも飛び出した。しかし、彼の強さは明らかであった。オーク共は彼を重宝し、自由をも許したのだ。

 塒における異常事態のさなか、彼が一人池に居たのも。彼が勝ち取った権利を行使していただけの話である。釣りという名の修練もまた、彼が人から奪った道具を。あれこれと試行錯誤した結果だった。


 オーク達が森に分け入ると、そこには武具の山があった。それは全て。変わり者のオークが、仲間から貰い受けたも
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