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血戦・姫騎士ゾンビVSサムライオーク〜そして全てが首になる〜
本編
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瞥した後、ヒトの形をしたものに触れた。軽々と屍を持ち上げ、口元に運ぶ。
 かぶり。
 奏でられる咀嚼の音。新鮮な『それ』を引き千切り、噛み砕く。味など知らない。ただ喰っていく。一口歯を突き立てる度。装束が、肉体が。聞き慣れぬ音と共に再生していく。

 そして。噛み千切られた屍にも。異変は生じた。
 肉が腐っていく。噛まれた傷口が、泡立っていく。やがて死体は食いちぎられた姿のままに目を見開き。のたうち、起き上がった。
 それは、許されざる二度目の生。生命への冒涜行為。

 されどそれは、死体そのものには関係なく。やがて屍は歩き出す。
 おぼつかない足取りで、よたよたと肉を求める。

 うめき声を響かせて、死体は洞窟を歩き始めた。姫騎士の尖兵として、オークも人も。全てを屍の同胞とするために。
 歩みゆくまでの姿を見届けた姫騎士は、更に洞窟を行く。足取りは穢れた意志に満ち、刀は地面と擦れて耳を塞がんばかりの音を放っていた。

 髪は白。わずかにのぞく肌は浅黒く。身体は動かす度に崩れていく。されど、姫騎士に迷いはない。己の行うべきことは。
 オークへの断罪。オークの殲滅。そのためには、手駒が足りない。故に向かう場所は、決まっていた。

 オークの塒である洞窟のある一角に、それはあった。姫騎士もかつて通った、生贄の牧場である。人の尊厳を奪い、仔袋とし。汚辱の過程を尽くして。最後には。

 姫騎士が現れた際にも、様相は変わってはいなかった。オーク共は女を辱め、貪っていた。鳴き声を上げながら腰を振り、女の悲鳴など聞こえぬと言わんばかりに獣欲を発散せしめていた。

 姫騎士に、躊躇いはなかった。一番近くに立っていたオークを無感情に薙ぎ払い、その者が蹂躙していた女の首に、刃を突き立てトドメを刺した。

 オーク共が異常に気付く。しかし欲に溺れていたのが災いだった。頭も身体も、思うように働かない。姫騎士は機先を制し、全てのオークを一刀のもとに切り捨てた。眉一つすら動かぬ惨殺であった。

 更に姫騎士は、女共にも刀を振るった。女共は、むしろ自ら贄になった。ただし姫騎士は救世主ではない。ただただ作業のように。女共を斬り殺した。

 そうして全てが躯になった後、姫騎士は先程行った冒涜を。またしても行った。今度は複数回。女の肉に歯を立て、喰らいついた。
 改めて言うが、腐肉の姫騎士は救世主ではない。姫騎士にとって女共は、ただの材料でしかない。

 その証拠は、僅かな時を経て示された。死した女が、動く屍へと変じる。オークの死体に、牙を立てる。立てられた側も、屍と変わる。
 そうして牧場に居たもの全てが生ける屍へ変わると。それは一気に洞窟へと溢れ出した。惨禍は臨界を越え、拡散する。

 オークだったものが。ヒトだったものが。
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