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血戦・姫騎士ゾンビVSサムライオーク〜そして全てが首になる〜
本編
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[1] 最後
  昏い洞窟の奥深く。そこには『かつてヒトだったモノ』の山があった。うず高く積まれた腐肉と骨の山。そこに今、一糸まとわぬ女が投げ込まれた。

 洞窟の肌と衝突する音。
 肉と骨に塗れる音。
 聞くことすら憚られる音が響き、身体が山の中に埋もれてなお。女は悲鳴を上げなかった。否。上げられなかった。最早、ヒトではないからだ。

 時折雫が岩肌に落ち、蛆は死体の腐り肉を貪っていく。湿気と腐臭が入り混じり、むせ返るという言葉すら生温くなるほどの臭いが漂っている。
 されど死したる女の目は見開いていた。未だに戦意を失ってはいなかった。

 ぷぎい、ぷぎい。
 死体の様を笑いに来た者がいた。オークである。この地はオークの塒であった。
 ならば、この躯の山は。そう。オークに辱められ、嬲られた果ての姿である。

 ぷぎい、ぷぎい。
 オークはヒトの死骸を嘲笑う。己に逆らった者の凄絶な行く末を嘲笑う。しかし、不意に嘲笑は止んだ。

 それは、怨念の力か。あるいは、今なお戦意を失わぬ女を媒介に、なんらかの術が行使されたのか。
 見開いたままであった女の目に、暗い光が宿ったのだ。
 直後。オークは無意識のうちに戦慄した。積み上げられていたはずの肉と骨が動き出し、女を飲み込んだのである。否、逆に女が屍を飲み込んだのか? 誰も知るよしはない。オークは既に逃げ、己を恥じて誰にも語らなかったからだ。

 かくて、誰も知らぬままに時は過ぎ。やがて腐肉と骨片は消え果てた。女が唯一人。躯の置き場に立っていた。
 骨肉を喰らい。眩いドレスじみた装束を血肉に染め。暗い瞳を宿し。黒く、鈍く光る刀を手にして。
 かつて姫騎士と呼ばれていた女は、汚濁に塗れた鎧を纏い。狂い乱れる、腐肉の姫騎士となり果てた。


 姫騎士は目覚めた直後。頭を二回、横に振った。
 生前にはなかった全能感。
 暗い力が、内側から溢れてくるようだった。
 腹の底か。あるいは蹂躙された個所からか。オークへの憎悪が、突き上げるように己を満たして。
 解放を試みるかのように、蛮声を轟かせた。
 声は洞窟のそこかしこにこだまし、反響し。
 なにも知らない哀れな下っ端オーク二匹と、運んでいた死骸を捕捉した。

 次の瞬間、姫騎士は動く。肉が千切れるのも苦にせず、奥底より駆け出した。生前よりも、更に軽く身体が動いた。「速く」と思うだけで肉が崩れ、更に軽くなった。
 オークが見える。刀を振る。この洞窟で奪われたものに似た、両手持ちの剣。しかし今は、片腕で振れる。

 ぷぎい。

 小さな悲鳴が耳に入り、オークの死を悟る。だが、満足はない。オークへの憎悪は、未だに己を突き上げている。他にも、やるべきことがある。手段は、すぐ近くにあった。

 姫騎士は、三つの死体を一
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