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その日、全てが始まった
第1章:出会い
第06話 『その時まで』
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対して、洸夜は言葉を紡ぎ始めた。

「今、ずっと日菜の事考えてるだろ?」
「……?!」

 洸夜の言葉に、紗夜は体をピクリ震わせた。
 その反応を見た洸夜は、自身の指摘が正しい事を悟った。

「なんで……」
「前にも言った筈だ。伊達にお前の兄貴はやってないって。俺が演奏を終えた後、時偶日菜と話してる時にしてる目をしてた」

 そう言った彼は、ただと言って話を続ける。

「その時、お前が何を感じてるかまでは分からない」
「話はそれだけ?」
「ん、ああ。この話はこれだけ。もう1つある」
「なに?」
「さっきのセッションの時の俺の演奏、どうだった?」

 そうね……と言って、紗夜は答えるのだった。

「正直、私よりもあの場に馴染んでいた。そして、私よりも演奏が綺麗だった。同時に、兄さんを羨ましくも思ったわ。初めての演奏で何回も共に練習を重ねた私よりも他のメンバーとの息があっていたのだから……だから、兄さんみたいになりたいとも……」
「そうか。なら、良かった」
「……?!」

 洸夜の返答は、普通では考えられないものであった。

「……私をバカにしてるの?!」

 紗夜は叫びにも近い声を上げていた。
 対する洸夜は、顔色1つ変えることなく言うのであった。

「違うよ。俺が演奏を再現出来ていたことに安堵したんだよ」
「どういう事か説明して」
「分かったからそんな怖い顔するな」

 洸夜は紗夜を宥めながら、説明し始めた。

「さっきの演奏、あの時奏でた音は、俺の音じゃない」
「じゃあ、誰のだっていうの?」
「それは???紗夜、お前の音だよ」
「私の……音?」

 洸夜は首を縦に振り、続けた。

「あの場面で俺が奏でていたのは、『氷川紗夜』の奏でていた音を再現したものだ。だから、あの場面でお前自身が馴染んでいる音だと感じたのなら、それはお前自身があの場所に馴染み込んでいるってことだ」
「私があそこに馴染んでいた……?」

 再び洸夜は頷いた。

「ああ。あの場面だと俺の音はRoseliaの音とは混ざらない。否、混ぜれないんだ」
「だから、私の音を再現したの?」
「そう言うことだ。後、紗夜がどう弾くかを見せて欲しいって言ったから……ってのもあるけどな」

 だから、と言った洸夜は紗夜の方は顔を向けて言った。

Roselia(あそこ)にふさわしいギタリストは、紛れもなく紗夜だ」
「そう……なのかしら……?」
「俺が断言する。だから、さっき言ってた俺みたいになろうとか思わなくても良い。お前はお前だ」

 そう断言する洸夜の目は、本気の時に見せるものだった。

「私は私……」
「そうだ。お前には、お前にしか奏でられない音がある。それだけは忘れるな」

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