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その日、全てが始まった
第1章:出会い
第06話 『その時まで』
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の当たり前なのよね」
「御名答」

 そう答えた洸夜は、顔を上げるのだった。
 そして、スコアを紗夜へと戻す。

「覚えた。いつでもいけるよ」
「え、もう覚えたの? コウ兄って、天才?」
「……どうだかな」

 あこの言葉を、洸夜は歯切れ悪くはぐらかすのであった。

「始めるわよ」
「了解。じゃあ紗夜、俺がどう弾くか見とけよ」
「ええ。そのつもりよ」

 そう言って彼等は、セッションを始める。
 少し長めの前奏。
 その時のRoseliaのメンバーの顔には、何度も練習を繰り返しているが故か、不安という表情は無かった。
 寧ろ、普段通りという顔であった。
 対する洸夜は、少しばかり厳しい表情だった。
 だが、即座に真剣な面持ちに切り替わると、ギターが入る部分からの演奏へと移る。

 友希那の歌声に、他のメンバーによるコーラスが重なる。
 洸夜はコーラス部分には触れず、ギターの弦を走らせることだけに意識を向ける。
 徐々に徐々に、演奏の熱は増していく。
 Roseliaの奏でる"唄"をしっかりと聞きながら、洸夜はそれに合わせ続ける。

「……?」

 彼女達の、渾身の瞬間に自信が奏でた音に、洸夜は違和感を感じた。
 そんな彼は、フレッドを抑えていた手を即座に離すと素早くペグを回し、音を調整する。
 そして、何事も無かったかの様に演奏を続ける。
 調整を終えた洸夜の音は、違和感なく走っていた。
 Roseliaと言う『音』の中に、彼は自身を馴染ませて行く。
 彼が持つ本来の『音』を残しながらも、彼女たちの音に同調することによって。

 その最中、洸夜は一つ一つの歌詞の意味を、演奏しながら噛み締めていく。
 あこの叩くドラム、燐子の弾くキーボード、リサの奏でるベース。そこに洸夜のギターが溶け合い、友希那の歌声を引き立たせていく。
 洸夜が噛み締めていた一つ一つの歌詞。
 それらは、友希那の力強い歌声と、Roseliaのメンバーの演奏に乗せられて、洸夜の頭の中へと焼き付けられていく。

 そんな洸夜は、溶け合った音を維持しながら、彼らの演奏はサビへと突入する。
 フィニッシュに近づくに連れて、彼らの演奏は熱を増していく。
 ボルテージが最大を迎えた状態で、最後の小節へと突入する。
 長めに響かせた音を、弦を抑えることによって沈める。
 それにより、彼らのセッションは終わりを告げた。

「……今の」

 友希那の言葉により、静寂という名の余韻が終わる。

「今までで1番良かったんじゃない!」
「私も……そう思い……ます!」
「最高でした!」

 他のメンバー達もそう、口々にそう言うのであった。

「紗夜はどうだった〜?」
「え、ええ。素晴らしい演奏だった
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