第百三十七話 肝その三
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「総大将が敵の本陣に来るなぞ出来ません」
「俺はそれをしたからか」
「はい」
まさにという返事だった。
「そこに貴方の強さ、肝を見ましたので」
「それでか」
「もうです」
それこそというのだ。
「貴方には何があろうと勝てない」
「そう判断してか」
「そしてです」
「こうして降るか」
「兄弟で話して」
四人でというのだ。
「そのうえで、です」
「決めたのだな」
「降ることを」
「戦の責を問われるなら我等が」
三兄と思われるやや若い男が英雄に言った。
「腹を切りますので」
「それでか」
「他の者達にはです」
「一切か」
「はい」
まさにというのだ。
「責を問わないで下さい」
「その時魂が消し去られてもか」
「構いませぬので」
「どうか国と民にはです」
末子と思われる最も若い男が最後に言ってきた。
「何もです」
「責を問わずにか」
「お願いします」
こう言うのだった。
「どうか」
「全て聞いた」
それならとだ、英雄は四人の言葉を受けて頷いた。そのうえで自分の前に控える四人に対して告げた。
「誰の責も問わない」
「我等のですか」
「誰もですか」
「そうされるのですか」
「四人共」
「そうだ、そのうえでだ」
英雄は四人にさらに話した。
「国も民も治めよう」
「そうして頂けるのですか」
「我等の責も問わず」
「薩摩と大隅を治めて頂きますか」
「その様にして下さいますか」
「俺は最初からそのつもりだった」
それこそというのだ。
「降ればだ」
「それで、ですか」
「責を問わず」
「では家臣達も」
「そして兵達も」
「全てだ」
まさにと言うのだった。
「そうさせてもらう、そしてそなた達はこれから俺の下で働いてもらう」
「貴方様の下で」
「では家臣としてですか」
「これからは生きよ」
「そう言われますか」
「九州を掌握してここまで治めていた」
このことを見てというのだ。
「それだけで見事な資質だ」
「それで、です」
謙二も言ってきた。
「我が勢力としては貴方達はです」
「四人共ですか」
「はい」
まさにという返事だった。
「家臣にしたいと考えています」
「そうなのですか」
「我等もですか」
「四人全員をですか」
「家臣に」
「これまでの健闘見せてもらったぜよ」
当季も四人に話す、彼は明るい笑顔だった。
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