第五十六話 卒業式の前その二十二
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黒門を見てです、またお母さんが言いました。
「入学の時も通って」
「卒業の時もね」
「通るわね」
「卒業式の後でね」
このことはもう色々な人から聞いています。
「その後でね」
「そうよ、お母さんもそうだったのよ」
「そうよね、ずっとね」
「天理高校では卒業式の後はね」
そこで終わりではなくてです。
「参拝してね」
「それで本当に終わりよね」
「そうなるのよ」
天理高校独特のことです。
「だからね」
「それで、ですね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「最後もね」
「黒門通るわね」
「おぢばにいたらいつも通る場所だけれど」
「卒業式でも通るって思うとね」
「また感慨があるでしょ」
「ええ、じゃああの門を通って」
あと少しです、本当に。
「私卒業するわね」
「そうしてね」
「それでまた成人していくから」
「そうしなしさいね、おつどめ着もお家にあるから」
このことも言ってきました。
「これからはおとめでもね」
「ええ、おつとめ着を着てね」
「ておどりとかもしてね」
「そうさせてもらうわね。おつどめ着もね」
思えばです。
「着られるなんてね」
「思わなかったでしょ」
「ずっとね」
そんな日が来るとか夢だと思っていました、それこそ大人になってお酒が飲める様になる位にです。
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