第七十一話 黄色から紺色へその十一
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彼は猿夜叉についてこう言った。
「英傑になるぞ」
「浅井家の若殿は」
「そうした方ですか」
「うむ、武芸と武勇に秀でておられるというが」
それだけでなくというのだ。
「心も備えられているという」
「だからですか」
「あの方はですか」
「必ずですか」
「うむ、浅井家を継がれれば」
そうなればと言うのだった。
「必ずじゃ」
「英傑となられる」
「そうなのですか」
「そして浅井家を残すだけでなく」
それに止まらずというのだ。
「浅井家の名を天下に轟かす」
「その武とお心で」
「そうなられますか」
「あの御仁は」
「左様、今浅井家は六角家に従っておるが」
初代の亮政は六角家を出たが久政の代つまり今はそうなってしまったがというのだ。
「しかしじゃ」
「それがですか」
「変わって」
「そうなりますか」
「うむ」
そうなるというのだ。
「必ずな、そして天下人を武で支えられる」
「そうした方にもなられますか」
「あの方は」
「得難い方じゃ、そしてな」
宗滴はここでだった。
無念を思わせる顔になった、それでこうも語った。
「わしはあの御仁が当家におられれば」
「そうも思われますか」
「その様に」
「うむ、わしも歳じゃ」
長きに渡って朝倉家の武を支えてきたがというのだ。
「そうなったからのう」
「だからですか」
「ご自身の跡を継がれる」
「その方として」
「あの御仁が朝倉家、越前におればとな」
その様にというのだ。
「思われて仕方ない」
「左様ですか」
「猿夜叉殿が朝倉家におられれば」
「そう思われますか」
「考えても仕方ないが」
それでもというのだ。
「思ってしまう、若しくは」
「若しくは?」
「若しくはといいますと」
「織田家の吉法師殿じゃ」
彼のことにも言及するのだった。
「あの御仁が朝倉家におられるなら」
「あのうつけ殿ですか」
「何かと奇矯な振る舞いが多いといいますが」
「それでもですか」
「あの御仁、恐ろしい器よ」
吉法師についてこうも語った。
「家督を継がれ数年のうちにじゃ」
「僅か数年ですか」
「それで、ですか」
「尾張どころではない」
この国だけに留まらずというのだ。
「天下に大きな力を持たれずぞ」
「まさか」
「あのうつけ殿が」
「そこまでになりますか」
「天下に大きな力を持たれる」
「尾張だけでなく」
「うむ、この朝倉家なぞじゃ」
それこそというのだ。
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