第七十一話 黄色から紺色へその十
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「揃えるべきとです」
「思っておるか」
「その様に」
「わしは鉄砲もな」
「いらぬとですか」
「思うが」
「ですがそちらもです」
「持つべきか」
「それも多く」
ただ持つだけでなくというのだ。
「そうも思っておりまする」
「お主は色々考えておるのう、だがな」
「父上は」
「だからな」
それでというのだ。
「お主の話は聞くが」
「天下の全てはですか」
「見る必要はないとな」
そこまではというのだ。
「なくな、そしてな」
「鉄砲も」
「いらぬ、金がかかるからのう」
「当家も銭は限られておるので」
「とてもな」98
鉄砲はいらぬと言うのだった。
「この考えは変わらぬわ」
「そうなのですか」
「お主が家督を継げば別だがな」
その時はというのだ。
「お主が浅井家を導け、しかしな」
「今は」
「わしが主じゃ」
この浅井家のというのだ。
「だからじゃ」
「父上がですか」
「ことを進める、それはよいな」
「はい、それは当然のこと」
猿夜叉は父にそれはと返した。
「ですから」
「このことはじゃな」
「はい」
淀みのない返事だった。
「それがし父上のお言葉には何があろうとも従いまする」
「そうしてくれるか」
「孝行は絶対のこと」
「そうか、しかしな」
久政は我が子の孝の心に感じ入った、そのうえで彼に話した。
「わしに何かあれば諌めることもじゃ」
「それもですか」
「孝行と心得よ」
「諫言もですか」
「わしが過てば」
その時はというのだ。
「遠慮することはない、諌めよ」
「そうなのですか」
「わしもその時は従う」
猿夜叉の諫言にというのだ。
「家臣達と共に言うがいい」
「さすれば」
「その様にな」
「そうさせて頂きます」
「ではな、しかし今はな」
「このままですか」
「当家と領地をな」
その両方をというのだ。
「治めていく」
「それではそれがしも」
「わしを助けてくれるか」
「及ばずながら」
「お主がいてくれて何よりじゃ」
久政は我が子と自分の考えが違うことは感じていた、しかし自慢の子であることは事実でその言葉を笑顔で受けていた。
しかし六角家に従っている状況は変わらず猿夜叉にとっては苦しい中にあった、しかし朝倉家では。
その彼を見て口髭がすっかり白くなり顔も深い皺が無数に刻まれている老人が周りの者達に話した。朝倉家の柱である朝倉宗滴だ。
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