第92話 司馬の猟犬
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を抉り出された痛みで転げ回っていた。
私は北郷の目玉を捨て、懐から布を出し、血を拭き取るとそれを捨てた。
北郷が痛みに苦しむ姿を四半刻ほど眺めていた。
「ぜ……絶対許さねえ……。お前も、劉ヨウも必ず殺してやる!」
北郷は肩で息をしながら、私に憎悪に満ちた視線を向け、痛みで震えた声で怨嗟の言葉を吐いた。
「くくっ……。やれるものならやって御覧なさい。何の力も持たないお前に何ができるのか楽しみにしているわ。どうせ、劉玄徳を頼るくらいしか能がないんじゃない」
私は胸の前で腕組みをし、態と北郷を小馬鹿にするように言った。
「どいつも、こいつも、俺のことを馬鹿にしやがって!」
北郷は更に興奮したように怒りを表情に表すと、彼は自身の剣を拾い、西の方角に走り去っていった。
私は北郷が走りさった先をずっと凝視していた。
「真悠様、北郷を見逃してよろしかったのですか?」
部下の1人、王克が私に言った。
「揚羽姉上の指示だから良いのよ。姉上は表向きは北郷を始末しろと言ったけど、どうしようもない屑なら見逃せと言ったわ」
私は王克を見て、薄い笑みを浮かべ、また、北郷の去った方角を見た。
「揚羽様が本当にそのようなことを仰ったのですか? このことが劉将軍のお耳に入ったら大問題ですぞ」
王克は慌てた表情で言いました。
「このことを知っているのは私とお前達だから大丈夫。北郷が口を割っても、私の名が出ても、姉上の名は出ないわ」
「それが問題ではありませんか? 劉将軍の真悠様への心証を害し、あなた様を遠ざける可能性がございます」
「王克、あなたは想い違いしているわよ。もし、そのような事態になれば、姉上は自身の命令で行わせたと告白するはず。今回の件で義兄上が姉上に死罪を下したとしても、姉上は黙ってその罪を甘んじて受けるつもりでいる」
「揚羽様がそのようなことを仰ったのですか!」
王克は青ざめた表情で言った。
「ふふ、あの揚羽姉上が話す訳無いでしょ。揚羽姉上は義兄上に真の英雄になって欲しいと思もっているのよ。だから、情に流された判断がどのような結果を招くかを知って欲しい。義兄上は暗愚ではない。きっと、分かって下さるわ」
「北郷の粗暴さを目の当たりにしましたが、あの者はこの先の逃亡で必ず非道を行いますぞ」
王克は険しい表情で言った。
「だから、良いんでしょ。北郷が非道を行えば行うほど、義兄上は固く決心されると思うわ」
私は自信に満ちた表情で、漆黒の森の木々の狭間から覗く、闇に煌めく星々を見つめた。
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