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曇天に哭く修羅
第一部
思惑
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紫闇はドラゴンズガーデンを出ていく。


「どうだい今の彼は?」


【龍帝学園】の五年生で生徒会長の《島崎向子/しまざきこうこ》は全ての相手を一撃で倒し、全ての試合を3秒以内に終わらせてきた一人の生徒に紫闇のことを尋ねていた。


「特に見るべきところは有りませんね。俺が優勝して終わりですよ。基本性能において話にならないくらい差が着いてますから。一定水準に達していない【異能】も意味が有りませんし」


向子の予想した通り、現状の紫闇では内なる【上位存在】に取って代わられでもしない限り、この人物に敵うことは無いようだ。


「拘束・封印・抑制・制限・限定・抑止・減少・衰退と色んな方法で本来の力を出せないようにしてるのに全然勝ち目が無いって言うのも悲惨だよねぇ」


向子にとって今年の夏期龍帝祭の意味は紫闇を成長させる為のもので、彼を新たな段階へ移行させる為の舞台装置でしかない。

そこに越えることが容易ではない『壁』となる相手を用意することで燃えてもらう。


「待ち通しいよ。完成の日が」

「俺に負けて《江神春斗(こうがみはると)》と戦う権利を失えばさぞかし悔しいでしょう。必死になって食い下がって来るはず」


そんな紫闇を返り討ちにして叩き潰す。

紫闇の想いに反応した内なる上位存在を強引に表へ引き出し、【神が参る者/イレギュラーワン】としての完全な覚醒を早める。

やり過ぎると紫闇が消滅して体を乗っ取られるので注意が必要だが、もしそうなっても始末しさえすれば良いだけのことで問題は無い。


「上手くいくことを願っとくか」

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