第一部
思惑
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【夏期龍帝祭】は滞りなく進む。
《立華紫闇》も[打心終天]の会得を除いては順調で、二回戦も三回戦も突破。
少しずつ注目を集めている。
早くも準々決勝に臨む彼は。
『立華選手ダウンッ! 三回戦までは圧勝だったのに苦戦させられていますッ!』
心身共に最悪のコンディション。
試合が始まる前は良かったのに始まった直後からいきなり原因不明の体調不良。
片や対戦相手の士気は極めて高い。
調子も抜群に良いようだ。
(頭が割れそうに痛い。体も熱くて仕方ない。自分が思うように動けない)
これ等に加えて時間が止まったような、以前に【刻名館】の連中や《黒鋼焔》に対して覚えたのと同じ感覚に襲われる。
あの時は不思議で奇妙なだけとしか捉えていなかったが今の紫闇には気分が悪い。
(体の動きに誤差が有るみたいだ)
お陰で普通なら苦戦しない相手にこの様。
紫闇は体調不良を利用してわざと自分に隙を作り出してから相手を誘い込む。
そこから金的を蹴り上げた。
倒れて痙攣する相手から【古神旧印】が輝く筋となって紫闇の体に入っていき、10カウントが進む毎に観客のボルテージが高まる。
逆転勝利が確定すると割れんばかりの大歓声が巻き起こりドーム内に鳴り響く。
『学年序列最下位のバッドルーザーが、[まぐれ勝ち]と言われ続けたこの男が準決勝への切符を手に入れましたッッ!! 立華紫闇ッ! お前は一体何者なんだあぁぁぁぁぁぁッッ!?』
ふと体調不良が消える。
(出来れば試合中に治ってほしかったけど、まあ勝てたから良しとしとこう)
花道を歩いて退場していく彼を讃えて沢山の紫闇コールが掛けられていく。
感動と感慨と感激。
罵倒されるばかりの人生だった彼が今はまるで英雄のような扱いを受けている。
紫闇は途轍もなく気持ち良かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
治療を受けた紫闇が控え室に戻る。
残りの準々決勝三試合を見届けた。
「準決勝の第一試合は俺と……」
序列一位の《クリス・ネバーエンド》
紫闇としては決勝で当たりたかった相手だが組み合わせなのでしょうがない。
準決勝第二試合には興味が無かった。
「一年の序列二位は今でも勝てるしな」
ベスト4に残った最後の一人は三軍の底辺から此処まで上がってきた男子。
紫闇と同じような立場だ。
(めちゃくちゃ強いって評判だけど、まあクリスより強いことは無いだろ。それなら何時も通り戦えば問題なく勝てるだろうし)
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