第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
なんだかんだで王様終了
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ユウリは私と王様の姿を見た途端、目を丸くした。それはまるで、先ほど私が王様を発見したときと同じパターンだった。
ユウリが驚きのあまり何もしゃべれないでいると、王様のほうから声をかけてきた。
「これはこれは勇者殿。まさかそなたも賭け事を?」
「いえ、これは公務として、一通りの施設を見て回ろうかと思いまして……」
ユウリにしては珍しく、戸惑いを隠せないでいる。まさかこんなところに王様がいるなんて、露ほども思わなかっただろう。
「なるほど。ユウリ殿はこの地に来て浅いしのう。知見を得るために訪れるとは、さすが勇者の称号を持つだけある」
「あの、王様はどうしてここに……?」
「実は格闘場には興味があってな。さすがに公務の合間には来れぬゆえ、こうして平民となり楽しんでいるのじゃが……どうじゃ? 次の対戦は共にどちらが勝つか賭けてみぬか? わしは手持ちが少ないゆえ、あまり多く賭けることができぬが、どちらの予想が当たっておるか、それを競うのもまた一興であろう」
王様は単純にユウリと一緒に賭けを楽しみたいからこう言っているのだろう。けれど、ユウリの方はさすがに後ろめたさを感じているのではないか。
現にさっきまで王様という特権を振りかざして町の人から金品を巻き上げ、傍若無人な降るまいをしているのに対し、ロマリア王は職務を犠牲にしなくては趣味に興じることができないと言っている。どちらが国の主としてふさわしい考えを持っているかと問われたら、言わずもがなだろう。まあ、趣味が賭け事っていうのもどうなのかとは思うけれど。
「……いえ、あの、お誘いしていただけるのは大変嬉しいのですが、賭け事は少々苦手でして」
「ふむ、そうか……。して、今日これまで我が国を見て回って、どう思われたかな?」
「そうですね。ここは治安も悪くなく、自然豊かで国民の人柄も良いので居住するには最適だと思います。ですが、国を治める身となると、正直なところ私のような器では、荷が勝ちすぎるようです。大変申し訳ないですが、この辺りで王位を退いてもよろしいでしょうか」
予想外の言葉に、王様はもちろん、隣にいた私も驚いた。だってあんなに自分勝手にやってたのに、いきなり王様をやめるだなんて、どういう風の吹き回しなんだろう。
「う、うむ……。おぬしがそういうのなら構わぬが……。本当に良いのじゃな?」
「ええ。かまいません」
そういうと、ユウリは頭上に冠している金の冠を慎重にとり、ロマリア王に手渡した。
冠を受け取ったロマリア王は、心なしか残念そうな顔をしていた。
あのあとすぐに、金貨の詰まった皮袋を取り合っているシーラとナギを発見し、二人もまた、私たちを見て驚いた。やっぱりシーラは探している途中でここに寄り、連続で大穴が当たってからというもの帰るに帰れずずっとこ
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