第二章:空に手を伸ばすこと その壱
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等であり、腐っても朝廷の力を見せ付ける。
しかし彼らだけがこの乱を治める人物ではない。
不敵な自信に満ち溢れたこの者は自然に他者を圧倒する気を持っていた。部下にも自分にも信頼を置き、畏敬の対象とされるまでになったこの者は、既に討伐に向けて自軍に向けて出陣の準備をするように命じてある。後は報告を待つだけである。
「華琳様、出立の用意が委細整いました」
この世界には恐ろしく似合わない猫耳フードをした女性が部屋の中へ入ってきて、討伐軍の用意が出来たことを告げる。華琳と呼ばれた少女はそれに目をやる。
「分かったわ、桂花。では早速行くとしましょう」
「はい華琳様、宦官共の度肝を抜いてやりましょう」
二人の少女が崩されることの無い自信を醸し出して部屋の外へ出て行く。前を悠然と歩く少女の目には覇王の威光が、それについてくる少女は前を行く少女に畏敬と陶酔の視線を向けていた。
「ついに、乱世が始まったみたいだね」
「はい、ご主人様。このような時こそ、どうぞ私の武をお使い下さい」
「愛紗だけではないのだ!鈴々も敵をばったばったと倒せるのだ!!」
「あ、私だけ除け者にされてる感じがする!私だって頑張るもん、ご主人様!」
雲ひとつ無い快晴の空の下で、戦乱の世などを気にも留めず明るく話す四人の構成は、男子一人に対して女子三人である。
偃月刀を掲げる少女と蛇矛を元気いっぱいに振り回す少女に、華やかな笑顔でその二人の間に入る少女はさながら姉妹のようであり、三人からご主人様と呼ばれる少年は明るくいつも通り振舞って自分を元気付けようとする姿に笑みを零す。
四人が乗る馬が先頭となってその後ろを何十、何百の人間が武具を持ち糧食を持ち旗を掲げて続いていく。空に翻る刃門旗は十字に交わされた剣の表しているようにみえる。自らの名を一字とってつけるのが普通であるがこれは例外であるらしい。自らの出自を表さぬそれは、いわば寄せ集めの義勇軍。この四人の呼びかけを通じて参加を希望した志願兵が占めており、戦意が高く同時に連帯感が高いことが兵達の行進からみてとれる。義勇軍でありながら中々の錬度であるが、やはりそれは正規軍には劣ることが否めない。軍の頭脳がいなくては数百の兵など有象無象の蟻の群れ、敵との戦力差が大きければすぐに蹴散らされることであろう。それを十全に承知している彼らは、少女の一人の幼馴染である、幽州太守公孫賛に保護を求めて行軍をしていた。
途中の黄巾賊をまとめて倒さんばかりに進む彼らの行く手は、未だ遮るものが一つもなかった。
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