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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋神の巫女と魔剣《デュランダル》 U
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覚の中にある。
それでもなお、白雪は立っていた。《魔剣》が自分に迫ってきているのだと理解すると、背に隠匿していたらしい鞘から、日本刀を取り出した。抜き身の刀身は非常灯で紅く照らされている。

白雪の前に立った《魔剣》はケープマントを深く羽織っていた。顔を覆うフードの、その僅かな隙間から見えるのは、蒼玉色(サファイア)の切れ長の瞳と銀髪である。
風貌と声色も相まって、白雪はより一層、《魔剣》には冷酷という言葉が相応しいと思った。


「……私を、どうするつもりなの」


白雪は紅に染まった白銀を《魔剣》に突き付ける。フードの向こうに覗く蒼玉色の瞳が瞬き、薄らと細んだ。
笑っているのか──、彼女はそう直感的に類推する。


「ふふっ、実に面白い。遠山と同等な状況で、貴様はまだそんなことが言えるのか。だが、それはお楽しみ(・・・・)だ」
「……お楽しみ?」


柄を握る手に力が込められた。白雪は訝しみ、眉を顰める。
そんな彼女を嘲るようにして 《魔剣》は冷笑を零すと、右腕を大仰に掲げ、こう告げた。


Follow me(私に着いてこい)。話は然るべき場所でしよう──《イ・ウー》でな。金剛石の素を見殺しにするには些か惜しい。その為、今は遠山が邪魔なのだ」


そして、傍らのキンジを一瞥する。冷酷な瞳と、今なお躍起な瞳とが向き合った。《魔剣》は自分を殺そうとしている。
キンジはそれに気が付いたのだ。彼の胸中で渦巻くのは、愚かしく一途な生への渇望。そして、そうでありながらも幼馴染を護るという渇求の念。その2つが相反していた。


「貴様はあの夜の口約束を破った。それが何を意味しているのか、分からぬとは言わせないが? あの愚かな男の独断にしても、こちらにとっては些か都合が悪い」
「だからといって……!」
「殺めることはなかろう──と? 何故?」


《魔剣》はさも当然かのように笑みを零す。
掲げていた右腕の手はゆっくりと滑らせるように、或いは撫でるように白雪の頬に沿われてゆき、最終的には下顎を捕らえた。
そのまま彼女の瞳を覗き込む。凍てつくような、どこまでも冷酷な瞳で、まっすぐと。


「禁忌を犯したからだ。それすらも分からぬのか、星伽よ」


銷魂したかのように、《魔剣》はまた、嘲笑する。
「馬鹿げたことを言う口は、貴様には必要ない」そう呟くと、白雪の口元に自らの唇を寄せた。
──何をするつもりだ。キンジは朦朧とした意識の中で、類推にもならぬ考察を幾度となく重ねていく。

ただ分かるのは、それが警鐘を鳴らすべき事態であることと、自分自身がこの状況を打破せねばならないということだけだ。
《魔剣》が遠山キンジという存在を蚊帳の外に置いているからこそ、
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