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戦国異伝供書
第七十話 独立その二

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「最早今川家はな」
「終わりですか」
「うむ、誰もおらぬのでは」
 それではというのだ。
「どうにもならぬ」
「それでは」
「今の駿河、遠江、三河は主が不在でじゃ」
 そしてというのだ。
「どうなるかわからぬ」
「そうした有様ですか」
「そして駿河はな」
 まずはこの国のことを話した。
「このままでは武田殿が入られる」
「あの方が」
「北条殿は関東に兵を全て向け駿河に向けるまではな」
 それはというのだ。
「出来る状況ではない」
「だからですか」
「武田殿はそれが出来る」
 この家の場合はというのだ。
「しかもご嫡男の太郎殿の奥方は今川家の方」
「駿河を手に入れる大義名分もおありですか」
「駿河とそこの民達に駿河に残る今川家の子女の方々の保護をな」
 それをというのだ。
「言ってな」
「そうしてですか」
「駿河に兵を進められ」
「あの国を手に入れられますか」
「その際武田の先のご当主殿は追いやられるが」
 武田信虎、彼はというのだ。
「それでもな」
「駿河は武田家のものとなりますか」
「若しかすると遠江も、そして」
「この三河も」
「そうなるやもな、我等はどうしたものか」
 元康は自分達のこれからのことを考えだした、だが容易に考えがまとまらなかった。あれこれ考えているうちにだった。
 彼のところにある者が来た、その者はというと。
「和上がか」
「はい、来られました」
 酒井が元康に話した。
「この度」
「あの戦の後駿府に戻られたが」
「それがです」
「この岡崎にか」
「来られて」
 そしてというのだ。
「殿にお会いしたいと」
「何用か、だが」
「和上が来られたからには」
「お会いせぬ訳にはいかぬ」
 雪斎、彼が来たならというのだ。
「如何なことでもな」
「左様ですな、では」
「うむ、お会いしようぞ」
 こうしてだった、元康は雪斎と会うことにした。そして実際に雪斎と会うと彼はまずは今川家のことを話した。
「今川家はもう領内には戻れぬ」
「織田家に殆どの方が虜とされて」
「それでじゃ」
 そうなってしまったからというのだ。
「もうな」
「駿河、遠江守護としての今川家は」
「そして三河の守護の吉良殿もな」
 彼もというのだ。
「虜となられてな」
「それではですな」
「うむ、それでじゃ」 
 だからだというのだ。
「もう今川家はな」
「駿河には戻れず」
「遠江も三河もな」
「保てませぬか」
「朝比奈殿とも話をしたが」
 駿府を守っている彼と、というのだ。
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