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曇天に哭く修羅
第一部
勝ち目は有るか
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の案を示した。


「江神の持つ一番の武器は『速さ』だけど、その速さが彼の(あだ)となる。紫闇との戦いを見るに、彼は高速移動中に殆ど減速しない。制動(ブレーキ)に到っては全く使われない」


紫闇はどういうことか理解する。

その身に春斗の斬撃を嫌と言うほど喰らい、まるで流れるように攻撃を(かわ)す、舞うような身のこなしを散々目に焼き付けてしまったから。


「減速も制動もしない高速移動中ならさぞかしカウンターは効くだろうな。つまり奴が俺に向かって近付いたら必殺の一撃を叩き込む」


正解だったようだ。

焔は首を縦に振る。


「そんなわけである技を教えるよ」


焔に呼ばれた祖父の《黒鋼弥以覇(くろがねやいば)》が対峙。

二人はズレも無く、共に致命傷を狙える位置にまで踏み込むが弥以覇だけが吹き飛ぶ。


「成る程……。相手と同時に勢いよく前へ出て、体術での攻撃が確実に届く間合いに入る。そこから【禍孔雀(かくじゃく)】を発動して胸に一撃か」


見えていたことに安心した焔が一息吐くと弥以覇は何事も無かったように立ち上がった。


「小僧が言った通り、この技は相手と自分が前に出る『推進力』を利用したカウンターじゃ。武術で言うと【交差法】と【後の先】が近いんかのう?」

「自分だけの勢いだけでなく相手の勢いも使えば通常の数倍から数十倍の威力を見込める。ここで自身の攻撃を禍孔雀にすることによって威力を更に何十倍にも高めるんだ」

「黒鋼流体術では【打心終天】と呼ぶ」

「原理的には【魔晄(まこう)】を操作する技術以外、普通の人間にも出来るよ。互いに助走を付けてクロスカウンターするか相手に紙一重早く攻撃を出させてから自分が紙一重早く攻撃を当てるかっていうシンプルな技だし」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(簡単そうに言ってるけど、普通の人間なら何十年と武術に打ち込んできた達人に近い人が格下相手に対して使った場合でも完璧に決められるかどうかっていう技術のはずだぞこれ……)


打心終天は互いに推進力が有るほど強い。

もし江神春斗が高速移動と突進技を合わせて使ってきたところに当てれば終わる。


しかし躱されたなら───


「紫闇の想像した通り、失敗すればジリ貧か即座に負けるだろうね。そもそも江神は本気のあたしと戦えそうな感じがしたから」


地力が違うのだ。

春斗は無理をして攻めずとも、時間を掛けて丁寧に戦っていれば良い。

それだけで紫闇をあしらえる。


「打心終天を決める為の過程(プロセス)が要るな。手を抜いているとは言え、僅かにでも江神を慌てさせるくらいしないと焦って攻めて来ないだろう」

「紫闇の
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