暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第13話:空駆ける奇術師
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留めて何やら話しているのを奏は見逃さなかったが、目が合った際に彼がウィンクと共にサムズアップしたのを見て特に心配はないかと改めて司令室を後にした。

「奏さ〜ん!!」
「うん?」

 司令室を出てある程度歩いたところで、響が彼女を追いかけて走ってきた。特に切羽詰まった様子でもないどころか笑顔であるところを見ると、何か問題が起こったとか言う訳ではないようだが……。

「どうした、響?」
「奏さん、この後って時間空いてます?」
「ん〜、まぁ特に何かあるって訳じゃないけど」

 この後は特にライブや収録の打ち合わせがある訳でもないので、適当に時間を潰して早めにどこかで夕食を済ませたら早々に帰って休むつもりであった。

 そう告げると、響は輝くような笑みを浮かべて口を開いた。

「それじゃあこれから、2人でご飯行きません?」




 ***




「……はぁ」

 奏が響からの誘いを受けている頃、翼は1人本部内の一画にある休憩所でコーヒーの入った紙コップを手に溜め息を吐いていた。紙コップの中身は元々ホットのコーヒーだったのだが、殆ど口をつけていなかった為に冷めて酸味が強くなってしまっている。

 彼女が意気消沈している理由は、言うまでもなく奏や颯人との関係の問題である。
 奏とはなんだか溝が出来てしまっているし、颯人に関しては奏の恩人でもあるので歩み寄りたいと思う反面、奏を取られたくないという反発心を抱いてしまっておりなかなか心を許せずにいた。

 事実、この数日彼とはロクに会話していない。

 今までに無かった相棒との溝と、歩み寄りたいのに踏み出せないジレンマ。その二つが翼の心を苛み、影を落とす要因となっていた。

──我が儘な女だな、私は──

 本当は颯人とはもっと仲良くするべきなのだし、奏との間の溝だって翼が勝手に作っているものだ。それは彼女自身分かっている。何とかすべきという事も、このままではいけないという事もちゃんと頭では理解している。

 ただ、どうしても納得しようとすると出来ないのだ。

 もしこのまま奏との仲が疎遠となり、ツヴァイウィングが解散となってしまったら?

 奏を颯人に取られてしまったら?

 そう思うと心中穏やかではいられないのである。

 それが余計に彼女の自己嫌悪を加速させ、更に深い溜め息を吐いてしまった。

「はぁ…………うん、よし」

 このままではいけないと、翼は紙コップの中の冷めたコーヒーを一気に流し込むと、気分転換と精神鍛錬も兼ねて一つ訓練しようと立ち上がった。

 気分が暗くなった時は、何も考えず体を動かすのが一番だ。

 そう思いその場を離れようとしたのだが────

「おっとっと! ちょいと待ってく
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