【その在り方】
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ん、もうすぐお誕生日でしょ? 誕生日会できないかなぁって」
「はは……、気持ちは嬉しいがそこまでする歳でもないし、わしだけの誕生日ではないからなぁ」
「じゃあ、ヒザシおじいちゃんの分まで一緒にお祝いすればいいんじゃないかな」
「ふむ……、それもそうかもしれんが、既に亡くなっている弟の誕生日を祝うというのも違う気がしてな……」
ヒアシはふと目を伏せる。
「ヒザシおじいちゃんって……どんな人だった?」
「──家族想いの優しく、強い弟だったよ。わしなどよりずっとな。わしの身代わりとなって、死なせてしまったようなものだ。その息子のネジも……大戦で死なせてしまった。弟の息子は、死なせてはならなかったのに」
独りごちするように呟くヒアシ。
「ネジおじさん、わたしとお兄ちゃんのお父さんとお母さんを守って死んじゃったんだよね」
「うむ……大切な仲間を、その身を挺して庇った。わしは……私は、弟も甥も守れなかった。日向当主として、一族の仲間として……私が死ぬべきだったというのに。せめてネジだけは……、死なせずに大戦後に分家の出ながら次期当主に据える事で、我が弟のヒザシに報いたかったのだが」
ヒマワリは祖父の独りごちのような話に対して何と言っていいか分からず黙って聴いている。
「宗家の白眼を守る為という名目で分家に強いた呪印制度……今でこそ廃止されているとはいえ、未だ額には死してしか消えぬ呪印の跡を残した分家の者達が居る。その者達の“生きる自由”は既に保障されているが、その中にネジも居るべきだった。ヒザシが本当に守りたかった、生きて欲しいと願った息子のネジ自身が“自由の死の選択”ではなく“生きる自由”こそ、意味があったのだ。……その意味を奪ってしまったのは他でもない、我が宗家だ。だからこそ、私は弟のヒザシや甥のネジの分まで生きねばならぬ。──過去の後暗い業を、背負いながらな」
「……ヒアシおじいちゃんは、幸せじゃいけないの?」
「いや……、孫二人に恵まれて十分幸せは分けてもらっておるよ。それ以上は、望まぬよ」
ふと微笑したヒアシは、ヒマワリの頭を優しく撫ぜた。
《終》
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