第7回 ポッキーの日(プニぐだ♀)
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中しすぎていたせいで、彼の顔がすぐ傍にまで近付いていると気付くのが遅れたのだ。何事だろうと目を瞬いていると、真正面にある双眸が瞼に隠れ、次いでさくさく、と軽やかな音が聞こえてきた。まるで焼き菓子を食べている時のような――。
「へぇ、変わった食感してんだなコレ」
「え、ああ、うん……」
リズミカルな音が途絶え、いつの間にか柔らかく熱いものが口に触れていた。緩く押し付けられたそれは、わたしまでも摘むかのように角度を、タッチを変える。やがて濡れた感触が唇の輪郭をなぞった後、ゆっくりと遠のいていった。
呆然とするこちらをどう思っているのか、彼は平然と別のフレーバーチョコがかかっているお菓子を食べ始めている。自分とは違い、数口で一本を口の中に収めてしまった男と目が合った途端、顔が一気に熱くなった。
「気に入ったんなら、もう一回するか?」
にやりと不敵な笑みを浮かべ、新たな一本を差し出してくるサーヴァントにこれまた一拍遅れて、わたしは大声を上げた。
「――しませんっ! クーのばかっ!」
無言のまま抗議の目を向けたところで、彼はどこ吹く風とおやつを頬張っている。明らかに血色が良くなっているであろう頬の熱はしばらく引かないし、まだまだ残っているお菓子達だって食べられなくなってしまった。……だって、こんなの、思い出しちゃうじゃんか。
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