第7回 ポッキーの日(プニぐだ♀)
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ちょっと気分転換をしよう。半ば睨めつけていた端末の画面をオフにして定位置へセットする。大きく背を伸ばしながら備え付けの冷蔵庫へ向かった。今日は特別なおやつがあるもんね。そうっと扉を開けば真っ先に目に入る金属製のバット。クッキングシートが引かれたその上には、十一月十一日に因んだお菓子がぎっしりと並んでいる。お手製だ。当然ながら自分も手伝ったが、わがままを受け入れてくれたキッチン組には感謝しかない。こうしてマイルームに一人で居られることにも一役買ってくれているのだから。
冷たいバットごと取り出し、数あるうちの一本に齧り付きながら考える。ああそうだ、ならば彼らの強化素材を優先的に集めるのはどうだろう。だいぶ私情が入っている気がするけれども、バチは当たるまい。
再び椅子に座りつつ、体温で溶け始めたコーティングされた部分のチョコレートごと咀嚼する。本来ならプレッツェル生地で作るところを、パフ入りの生地に替えてもらった甲斐あって、さくさくと良い音がした。
「ポッキーより少し太いし、長さも短いけど……おいしいからよし」
独り占めするのは勿体無いと思うものの、食堂で食べようものなら――そこまで想像しかけ、慌てて頭を振る。賑わいをみせていた、あのゲームには関わりなくないのだ。
二本目のおやつを口元へ運びながら、またタブレットへと手を伸ばす。キッチン組用の素材を確認しなければ。
「お、マスターそれ、何食ってんだ?」
「クー。今日だけの、特別なおやつだよ」
きちんと飲み込み終えてから、声の主を見上げる。マイルーム待機を日頃からお願いしているプロトタイプのクー・フーリンだ。三本目を摘んで、このお菓子を用意した経緯を簡単に話し、折角二人になったのだからとお誘いの言葉をかけることする。向かい側の椅子を勧め、彼が腰を下ろしたところで振っていたおやつに口を付けた。
うんうんと一人唸りつつ、何本目かのおやつを咥えたまま上下に揺らす。必要な素材がある程度、共通していれば周回が楽になるだろうか。いや、それで必要数がとんでもないことになっても困る。入手が容易なものからコツコツと集めていく方が一番堅実かな。どうしたものか、腕を組んだところで、対面の彼に動きがないことに気が付いた。
視線を合わせれば、戦闘の最中のような赤が、真っ直ぐにわたしを見ていて、反射的に息を呑む。咄嗟に謝らなければと声を出そうとして、まだお菓子を遊ばせたままだったことを思い出した。
「ご、ごめん……行儀が悪かったね。いま食べちゃうから」
一旦口元から離し、急ぎ断ってからチョコレートがなくなってしまった端へ齧り付く。スピードを上げるため、押し込もうと人差し指で素の生地部分に触れる、その瞬間ぱしりと手首を取られた。食べることに集
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