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聖国のジルフリーデ 〜勇ましき姫と気高き女騎士と、男勝りな女戦士と妖艶な女盗賊は、媚薬の罠に乱れ喘ぎよがり狂うも、心だけは屈しない〜
過去編 孤高の戦姫は、過去を捨て前へと進む
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取りながら。
かつての戦姫は、「決別」の証を確かめるように――後ろ髪と、汗ばんだうなじを撫でる。故郷を捨て、王女としての誇りを置いていくと決めた時、彼女はポニーテールを切り落としていたのだ。
あれからロザヴィーヌは、自分しか信じない冷徹な女盗賊として生きていくはずだった。
かつての自分を彷彿させるジルフリーデとの出会いがなければ、間違いなくそうなっていただろう。
そして出会った頃も、彼女のことを最初は笑っていた。帝国兵には勝てても、帝国軍には絶対に勝てない。それに、民衆が自分達の献身に応えることなどないのだと。
だが、ジルフリーデという姫君は。真摯な眼差しで、それでも戦う道を選ぶと宣言し――それを、実践し続けていた。
それは、ロザヴィーヌが生還と引き換えに捨てた「誇り」そのものだったのだ。
自分がとうに諦めた今でも、人々を救う道を捨てない者がいる。その姿は、一度背を向けた女盗賊には、あまりにも眩しくて。
今さら、そんな資格などないと理解していながらも。手を伸ばさずには、いられなかった。
そして彼女は、決意したのだ。ジルフリーデの心を折らせてはならない、自分と同じ轍を踏ませてはならない。
彼女との出会いが「運命」だとするならば、それこそが自分の「使命」なのだと。
やがてロザヴィーヌという女盗賊は、報酬金目当てという「建前」を条件としてジルフリーデに同行し、再び帝国軍と戦うことになった。
最後にもう一度だけ。誰かのために戦っていた、あの頃の自分に戻りたい。やり直したい。これ以上、あんな思いを誰にもさせてはならない。
そんな胸中を、誰にも語ることなく。孤高の戦姫は、金にがめつい妖艶な女盗賊として――今も、姫君達の支えとなり続けている。
「……」
仲間達の武器と共に、部屋の壁に立てかけられている愛用の槍。それを一瞥するかつての戦姫は、汗を拭っていたタオルを、無意識のうちに握り締めていた。
祖国を捨てても、誇りを捨てても、その1本だけは捨てられなかったのだ。愛する父が遺してくれた、形見だけは。
「……ジル」
やがて、その名を呼びながら。ロザヴィーヌは自分の隣ですやすやと眠る、蒼い髪の美姫を見下ろし――その白い頬を、慈しむように撫でる。
自分と同じように父を殺されたばかりか、残された母まで慰み者にされている彼女の心中は、察するにあまりある。一刻も早くアンジャルノンを倒し、彼女もこの国も救わねばならない。
「……大丈夫よ、ジル。絶対に、私のような思いはさせない。そのためにきっと、私とあなたは出会ったのだから」
安らかな寝顔を前に、決意を新たにしたロザヴィーヌは――月下の夜に独り。紅い眼を静かに、そして熱く滾らせるのだった。
そんな彼女は
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