第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
王様の秘密
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勢い良く起き上がったかと思うと、すぐさまユウリが向かった方へ走り出すナギ。私も慌ててシーラを引き連れてナギを追いかける。
「ねえ、なんでそんなにユウリを追いかけるのに必死なの?」
するとナギは走りながら、ユウリ並みの不機嫌な顔でこちらを向いた。
「その言い方、すげー気にいらねーんだけど」
「あ、ごめん。でもなんで? そんなにユウリの王様姿が気になるの?」
「お前なあ……。いくらボケてても言っていいことと悪いことがあるだろ。あいつがどんな姿してようがオレには関係ないね。オレの目的はただ一つ、あいつの裏の顔を突き止めることだ!」
「裏の顔?」
なぜかガッツポーズを決めるナギ。
「あいつがオレたちにあんなでかい態度とってるなら、こっちもあいつの弱点見つけて対抗してやろうってことだよ。お前だっていつもあいつにいろいろ言われてんだろ?」
「そりゃまあないとは言わないけど……」
でもなんかそれって、違う気がするなぁ。それとも私が今のこの環境に慣れてしまったからそういうことが言えるだけかな。
そんなことを言っている間に、私たちは商店街の町並みへと入っていた。大通りよりはやや狭い道だが、それでも路上には露店も連なっており、人も多く賑わっている。だが、その中でもひときわ賑わっているのが、商店街を入ってすぐにある道具屋だ。
こっそり近づいてみると、人ごみの中心にいたのはやはりユウリだった。ユウリは王子様の姿で冷静に道具屋の主人と値切り交渉を行っている。いや、良く聞いてみると、値切りどころの騒ぎではなかった。
「おい、おやじ。俺はこの国の王だ。これからお前たちの生活や身の安全を守ってやる代わりに、お前らの売っているものを全部俺に差し出せ」
訂正。これは立派な恐喝です。
「いやいや、いくらあなたがこの国の新しい王様でも、さすがに全部タダで渡すわけには行きませんよ。こっちにも生活がかかってるんですからね」
道具屋の主人はいたって冷静な対応をした。そりゃ最もな意見だ、と思ったが、ユウリは変わらぬ表情で食い下がる。
「ほう? お前は今、王の命令に逆らったと言うわけだな? 王の命令に逆らうものはどうなるか、わかってるんだろうな」
目を鋭く光らせる王様を目の当たりにして腰が引ける道具屋の主人。そのただならぬ威圧感なのか、それとも王の命令に逆らったからなのか、彼はおびえてこれ以上声も出ない。
「よし。じゃあこの薬草は全てもらう」
まるで当然のように、商品棚から薬草を根こそぎ掴み取る。主人はいきなりのユウリの行動に度肝を抜かれたのか微動だにできなかった。そしてユウリはそれを懐に入れた後、やや引き気味の女性たちの間をすりぬけ、毅然とした態度でその場を後にした。
「うわぁ……」
私は思わず声を漏らした。
「あいつには良心ってもんがない
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