暁 〜小説投稿サイト〜
ULTRASEVEN AX 〜太正櫻と赤き血潮の戦士〜
第肆話 火喰い鳥-クワッサリー-
4-1 桐島カンナ
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したガラスの靴を頼りにシンデレラを探し、彼女の家でついにシンデレラを見つけ出し、二人は結ばれてハッピーエンド…皆も知っていると思うが、大筋の内容はこれだ。
今は物語の見せ所でもある、シンデレラと王子が舞踏会にてともにダンスを踊るシーンだ。
「私、夢でも見ているようです。こんなにも幸せな一時を過ごせるなんて…」
家族から虐げられているシンデレラ(すみれ)にとって、華やかなダンスホールで素敵な異性と共に語らいながら過ごす時間は、これまでの人生の中でも絶頂と言えるものだろう。それは、シンデレラという容姿と、それ以上に美しい心を持ち合わせた女性と出会えた王子もまた同じだ。
観客たちは、二人の魅せるシーンに心惹かれ、静かにその名場面を楽しむ。
…が、長らく、そして良く花組の舞台を見ている客敵意をつまりコアなファンの中で、あることに気づいた者もいた。
「…なぁ、今日のマリアさん、顔が暗くないか?」
その言葉を隣にいる知人に、ある男性が呟いた。
彼の予想は、的を射抜いていた。
「…」
次は王子役であるマリアのセリフだった。だが、シンデレラの幸せに満ちた思いに対して、同じ気持ちを返さなければならない一場面なのに、マリアは何か思い詰めたような顔を浮かべたまま無言だった。
マリアの脳裏には、かつての幸せに満ちた記憶が甦っていた。


雪の降る夜の街の、誰もいない広場。街頭に照らされた彼女と、特徴的な丸いサングラスを着けた男性が、視線を合わせ、思いを交わし会わせながら、二人きりのダンスを踊る…

――――マリア

愛しい人が自分の名を、愛おしい思いを胸に呼ぶ。マリアは名を一度呼ばれる度に、更に幸せになっていく。

「…さん、マリアさん」
遠い場所から別の誰かが呼んでいるような、すみれの呼び掛けに、マリアは我に帰った。
「次はあなたのセリフでしてよ」
今はまだ舞台の真っ最中、集中を途切らせてしまうとは。
すぐにマリアは王子役として返しの変人をするのだが…
「あぁ、私も幸せだよ、すみれ」
シンデレラ、と呼ばなければならないのに、ここですみれの実名を言ってしまうミスを犯してしまった。
「す…すみれの花のような美しい君と踊れて幸せだ」
明らかにのどを詰まらせたような、動揺を表した口調。咄嗟に思い付いたアドリブのセリフで切り抜けたものの、マリアがらしくないミスを犯した事実は残ってしまった。



「マリアが…台詞をミスした?かすみ君、それは本当なのかい?」
「ええ、由里から聞きました。日ごろから徹底したお稽古をなさっていたマリアさんにしては珍しいです。私がここで働いてから、初めてのことです。なんとかアドリブを利かせたことで、劇としては結果的に成功したと言えますけど…」
舞台終了後、客を見送った後、かすみから話を聞いたジンと
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