本編
本編8
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とに、歩き出そうとした私の腕は、なぜか隣にいた怪盗キッドに掴まれてしまった。
「え……?」
驚いて彼の方を振り返ると、彼は私にニコリと微笑みかけた。困惑して彼を見つめても、なにを言うわけでもなく、ただ笑みを浮かべている。
「怪盗キッド!」
少し離れた場所にいるアオイは、こちらに向かって大きな声でそう叫んだ。状況についていけない私は、私の隣にいる怪盗キッドと、少し遠くでこちらを見つめるアオイとを、ただ交互に見続けることしかできない。
アオイは意気込むように大きく息を吸い込んだ。これからどうなるんだろう。喧嘩とか、にはならないよね……?
不安に感じて、どうしようかと頭をぐるぐるさせていると、アオイはいきなりバッと頭を下げた。
「頼む! 今回は手を引いてくれ!」
予想外で、少し驚いてしまった。私の不安は見当違いだったようである。
でも、アオイらしいやり方だと思った。アオイは、本当にやむを得ない状況にならない限り、自分から喧嘩をしに行く人ではない。
怪盗キッドはなにも言わず、ただ少し意外そうな表情でアオイを見ていた。その沈黙を、このままでは承諾してもらえないという風に取ったのか、アオイはまた口を開く。
「……ツグミは」
自分の名前が出てきたので、私はより一層耳を傾けた。なにを言われるんだろう。少し緊張しながら次の言葉を待つ。
アオイはゆっくりと顔を上げると、意を決したようにこちらを真っ直ぐに見つめた。
「ツグミは……可愛い!」
「は!?」
アオイの言葉に、私は思わず大きな声をあげてしまった。なんの冗談だ。
私ほどではないけれど、怪盗キッドもこれは予想外だったのか、少し驚いた顔をしていた。唖然としている私たちを置いて、アオイはあくまで真剣に、強い声で言葉を続ける。
「ツグミは可愛い。それに、綺麗で……笑顔が、まるで花みたいだ。誰にでも分け隔てなく優しい。一緒にいると、こっちまで優しくなれる」
アオイの口から溢れ出る褒め言葉に、私の顔はじわじわと熱くなってきた。すごく恥ずかしい。恥ずかしすぎて、なんだか居たたまれなくなってくる。
一方で、それでも私は、とてつもない嬉しさを感じていた。その声や様子から、アオイが言っていることは冗談なんかじゃないとわかった。
「彼女は、綺麗な宝石と同じくらい魅力的だ。お前が連れ去ろうとする理由もわかる。でも……俺にとっても、世界でたったひとつの宝石なんだ」
アオイはそう言って、真剣な眼差しでこちらを見つめた。といっても、私ではなく怪盗キッドの方だ。怪盗キッドに目を向けると、依然としてとても驚いた顔をしていた。
「だから、頼む。今回は、手を引いてくれ!」
再び深々と頭を下げたアオイは、少し震えて
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