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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十一話 フラグは立てて回収するもの(時たま忘れる)
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ない極東の猿に自分の最愛の部下が持っていた剣をもたれるのは我慢なら無いのだろう。

「うぁ……ぁあ……」

別段その怒りを隠す様子も無いザミエルに螢は飲み込まれてしまう。圧倒的なまでの差。感じるのはただ恐怖のみ。逆らおうなどという反骨心すら沸き起こらず、改めて自分は凡俗でしかないのだと認識させられる。そして、その恐怖から少しでも遠ざかりたいがために縋る様に腰に差した剣に触れる。しかし、それは目の前にいる相手にとって逆鱗だったらしい。

「誰の許可を得てそれに触れているのだ!小娘ッ!!」

その怒声に竦み上がる螢、その直後吹き飛ばされる。頬に激痛を感じたことから打たれたのだと遅まきながらに気が付く。ただ叩かれただけで吹き飛ばされるほどの実力差にも、すぐさま腰に差した剣に縋ろうとしたことも含めてますます自分の惨めさを感じてしまう。

「立て!もう一度だけ聞くぞ。貴様が何故それを持っている?」

血反吐を吐きながらも必死に起き上がろうとする螢。容赦なく蹴りを入れるザミエルだがよろめきながらも立ち上がる。

「それは本来なら私の部下の剣だ。それを名誉アーリア人ですらない極東の猿ごときが触れていいと思うなよ」

「私は……櫻井螢はレオンハルト・アウグストの称号を…聖餐杯猊下より授与されています……故に同じ団員番号である五番を預かる身として私が責任を持って所持しております」

無論、これは嘘でしかない。が彼女は今ある意味では縋ることの出来る対象である剣を失いたくなかった。

「成程、そういえば貴様、キルヒアイゼンの席に居るのだったな。あの神父が仕立てたようだが正直な話、誰も認めてはおらんぞ。しかも、アレに最早その権限は存在していない。そもそも貴様は自分の仕事すら果たしていないのだろう。ならばせめてその命をもってこの場の贄となるがいい」

炎が巻き上がり、ザミエルの頭上で燃え盛る。ルーンが刻み込まれおよそ櫻井螢が全力で放ったとしても足元にも及ばないであろう程の熱量が場を支配する。

殺される。考えるまでも無く自分はこの場で何一つ出来ずに殺されるのだろう。そう呆然と感じてしまう。

「ねえ、兄さん、ベアトリス。私もう疲れちゃったよ。いっぱいいっぱい努力したけどさ……誰にも認められなくて、そんなの出来っこないって言われて、そんなことはしちゃいけないんだって諭されてさ。挙句の果てに宙ぶらりんで仲間はずれ。いい迷惑だよ。私はただ、普通に二人と一緒に生きて居たかっただけなのに……」

諦めた。諦めたくなくて諦めたら終わりだって言い聞かせて、どんなつらい目にあっても諦めようとしなかった櫻井螢は此処で初めて現実を見つめ絶望して諦めを見せた。
だが、現実から逃避して諦めようとも目の前の現実が変わるわけではない。ルーンは完成し、ザミ
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