第五章 仲間
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に顔を歪めた。
ぎ、と歯を食いしばり、ヴァイスタを睨みつけた。
避け損ない、触手の先端にある無数の牙に左腕を噛み付かれたのである。
先ほど応急処置をした左腕を、再び。
噛みつかれたまま、ぐん、とそのまま身体を引っ張られるが、なんとか剣を右手だけ振るって、触手へと叩き付けた。
先ほどは焦るあまり魔力を込め切ることが出来ず、全力で剣を振るおうとも弾かれるだけだったが、今度は僅かながらの覚悟が生じたこともあり痛みの中でも魔力をそこそこ込めることが出来て、見事ヴァイスタの触手がスパッと切断されていた。
ぼとりと落ちた触手の先端は、すぐにひからびて砂になって消えてしまったが、ヴァイスタ本体の腕からは、じくじくと白い粘液が垂れて、もう再生し掛かっている。
そう、ヴァイスタは致命傷を与えない限りまるで意味がない。
少しずつダメージを与えていく、という戦い方が通用しないのだ。
時間を掛けるほど、反対にこちらばかりが奪われていく。
体力、魔力、気力、すべての力が。
「やっぱり……」
強引に、突破するしかないのか。
一か八かだけど。
でも、このままじゃあ……
決心したアサキは剣を構え、たん、と一歩踏み込んだ。
ぶん、と伸びるヴァイスタの攻撃を、剣のひらで受け止めつつ、返す剣先を胴へと叩き付けた。
いまだ!
剣先を叩き付けたその瞬間には、斜め前方へ飛ぶように、ヴァイスタの脇を抜けていた。
いや、
その瞬間を待ち構えていたかのように、もう一体が二本の触手を同時に振るった。
まともに受けて、アサキの身体は横殴りに吹っ飛ばされていた。
紙くずのように実に軽々と飛んだアサキであるが、もちろん実際には何十キロという体重があるわけで、その勢いで、壁に頭と身体を打ち付けたならば、これがどうしてたまろうか。
意識を失いかけたアサキは、崩れ、ずるずると、地へと落ちた。
魔道着の効果か、アサキの精神力か、かろうじて意識を保ち、地を蹴り横へ飛び、ごろんと転がった。
次の瞬間、アサキがもといたところに、ヴァイスタの真っ直ぐ伸びた槍状の腕が、壁を穿ち、突き刺さっていた。
もしもアサキがあっさり意識を失っていたならば、既に生命はなかっただろう。
助かった。
と、いえるのかどうか。
だって……
はあはあ息を切らせながら立ち上がるアサキであるが、立ち上がり切る前にがくりと膝が崩れていた。
ダメージの蓄積に、もう身体がボロボロなのだ。
なにもせずとも勝手に治癒して行くヴァイスタと違い、魔法が使えるとはいえ人間の身、休まないことにはいつまでも戦い続けることは出来ない。
これ以上は、もたない。
分かっている
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